粒立ち荒めの王道ハイゲイン・ディストーション
Pro Co RAT 2 は、80年代から現代まで定番として愛され続けているハイゲイン・ディストーションです。粗くザラついた粒立ちと、独特の「FILTER」ノブによる音色コントロールで、オルタナ〜グランジ系のガレージ感あふれる歪みから、タイトなリフ向きのメタル寄りサウンドまで幅広く対応します。
[Pro Co] RAT 2|ペダマニレビュー
どんなペダル?
RAT 2 は、オペアンプ+クリッピングダイオード構成の、いわゆる王道ディストーション回路をベースにしたペダルです。
BOSS DS-1 や MXR Distortion+ と並び立つ「教科書的ディストーション」のひとつですが、RAT 系の特徴は何と言ってもザラっとした質感と、中高域のエッジです。
- 低めのゲインでは、やや粗めのクランチ〜オーバードライブ
- 中〜高ゲインでは、コンプレッション感の強いファズライクなディストーション
というように、Drive 量によってキャラクターが大きく変わるのもポイント。フィードバックしやすいので、ラフに弾いても「それっぽく」聞こえるロック向けのペダルです。
サウンドの特徴(ザラつきのある中域フォーカス系ディストーション)
RAT 2 のサウンドを一言で言うと、中域にフォーカスしたザラザラ系ハイゲインです。
「FILTER」ノブの動き方が独特で、通常のトーンとは逆向きに効きます。
- DISTORTION
9時〜12時までは歪み量の変化が大きく、クランチ〜荒れ気味のドライブまで一気に変化します。1時以降はコンプレッションが強くなり、いわゆる“RAT らしい”密度の高い歪みになります。 - FILTER
反時計回り:高域が出てザラザラ・ジャキジャキした攻撃的なトーン
時計回り:高域が削れ、ミドル寄りのダークなトーン
ハイを落としていくと、ファズに近いスモーキーな質感になり、グランジ〜ストーナー寄りの雰囲気が出せます。 - VOLUME
アンプをしっかりプッシュできる出力を持っており、クリーンアンプに対しても充分な音量ブーストが可能です。
低域はタイト寄りですが、FILTER を絞り気味にするとロー〜中低域が前に出てくるので、パワーコード主体のリフに向いたキャラクターになります。
使い勝手・セッティングのイメージ
つまみは DISTORTION / FILTER / VOLUME の3つだけなので、操作そのものはシンプルです。
クランチ系リズム(90年代オルタナっぽい薄歪み)
- DISTORTION:9〜10時
- FILTER:10〜11時
- VOLUME:原音と同じ〜少し上
ストラトやテレキャスとクリーンアンプの組み合わせで、ガリっとしたクランチリズムが作れます。
ピッキングを強くするとザラっと歪み、弱く弾くとやや汚れたクリーン、という「ラフさ」を活かす設定です。
代表的 RAT サウンド(グランジ/パンク寄り)
- DISTORTION:12〜2時
- FILTER:12〜1時
- VOLUME:バンドの中で少し前に出る程度
いわゆる“Kurt Cobain ライン”のニュアンスに近い設定。ミドルが前に出て、パワーコード主体のリフが気持ち良く抜けます。
ハイゲインですが TS 系ほどタイトではなく、程よく暴れる感じが残るのがポイントです。
ダーク寄りリード/ファズライク
- DISTORTION:2〜3時
- FILTER:2〜3時
- VOLUME:音量を整える程度
FILTER を絞り気味にして高域を抑えると、ハイがザラつきすぎず、サスティンの長いリードトーンになります。
ファズほどローがボワつかず、バンドミックスの中でも輪郭を保ちやすいのが利点です。
ノイズレベルはハイゲインとしては標準的〜やや多め。静かなパートでは、ゲートやボリューム操作で整えてあげると扱いやすくなります。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- “RAT らしさ”のあるザラザラした質感
きれいに整ったモダンディストーションとは違い、あえて少し荒れたテクスチャーを残すことで、ロック/オルタナ系の「生々しさ」を出せます。 - FILTER ノブでかなり広い帯域をカバー
ハイをバッサリ落としてダークにするも良し、開き気味にしてアタックを強調するも良し。アンプやギターを問わず、現場で音作りを追い込みやすい設計です。 - ギターだけでなくベースにも使える
ローがスカスカになりにくいので、ベースに軽く混ぜてアタックと歪み成分を足す用途にも向いています。特に FILTER を絞り気味にしたダークセッティングは、ベースのディストーションとして実用的です。 - ボードに1台あると「ラフに歪ませたい」場面で頼れる
きれいに整ったハイゲインしか持っていないときの「もう少し汚したい」にピッタリなポジション。常時オンというより、曲単位でキャラクターをガラっと変えるスイッチャブルなペダルとして重宝します。
注意しておきたいポイント
- ハイ〜上の中域が強く、人によっては“耳に痛い”ことも
FILTER を開けすぎると、アンプやスピーカー次第ではかなり刺さる帯域が出ます。バンド全体の音量感を聴きながら、耳に痛くならないポイントを見つける必要があります。 - TS 系のようなタイトなローやミッドブーストは期待しないほうが良い
いわゆる“チューブスクリーマーのノリ”とは方向性がまったく違います。ミッドを押し出してタイトにまとめたいなら TS 系、荒さとガレージ感を足したいなら RAT、という使い分けがオススメです。 - ゲインを上げるほどノイズも増える
DISTORTION を2時以降まで上げると、サスティンは伸びる代わりにヒスノイズも増えてきます。ハイゲインで使う場合は、ノイズゲートやボリューム操作でのケアを前提に考えたほうが安心です。
機種の仕様
| メーカー | Pro Co Sound |
| 製品名 | RAT 2 |
| エフェクトタイプ | ディストーション(アナログ) |
| コントロール | DISTORTION(歪み量) FILTER(トーン/ハイカット方向、逆回転動作) VOLUME(出力レベル) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ベース入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V DC アダプター用ジャック(センターマイナス、2.1mm) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(センターマイナス、一般的な BOSS タイプ互換) |
| 消費電流 | おおよそ 15 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 規定入力レベル:-20 dBu 入力インピーダンス:1 MΩ 規定出力レベル:-20 dBu 出力インピーダンス:1 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:89 mm 前後 奥行:112 mm 前後 高さ:63 mm 前後 質量:約 600 g 前後(電池含む) |