温かく溶けるビンテージ系アナログディレイ
MXR M169 Carbon Copy Analog Delay は、最大約600msのディレイタイムと、温かく滑らかなアナログディレイサウンドが特徴の定番コンパクトディレイです。ギターのハイを少し丸めたような「太くて柔らかい残響」が得られ、ロックのソロやクランチの奥行き付けはもちろん、アンビエント系の浮遊感あるサウンドメイクにもフィットします。
[MXR] M169 Carbon Copy Analog Delay|ペダマニレビュー
どんなペダル?
Carbon Copy は、BBD(バケットブリゲード)素子を使った完全アナログ設計のコンパクトディレイです。デジタルの「クリアすぎる残響」とは違い、リピートを重ねるごとに高域が少しずつ落ちていく、クラシックなアナログディレイ特有の減衰感が魅力です。
前面には Delay / Mix / Regen の3ノブ、上部に小さな「MOD」スイッチを搭載。MOD をオンにすると、リピート音にさりげないコーラス/ヴィブラート的な揺れが加わり、テープエコーを思わせる不安定さをプラスできます。揺れ方の深さ・速さは内部トリムで調整できるので、さりげない“ちょい揺れ”から、ドリーミーなうねりまで幅を持たせられます。
シンプルな3ノブ構成で直感的にセッティングできるため、「とりあえずボードに1台アナログディレイを」と考えたときの筆頭候補になりやすいモデルです。
サウンドの特徴(暗めで太いビンテージ系アナログディレイ)
Carbon Copy のサウンドは、ひと言でいうと「ほんのり暗くて、太く溶けるディレイ」です。デジタルディレイのようなフラットでハイファイな反射音ではなく、原音より少しロー成分が強く、ハイがロールオフされたリピートが後ろに回るイメージです。
ディレイタイムはざっくり 20〜600ms の範囲で、ショートディレイからロングエコーまで一通りカバーできますが、特に気持ちいい領域は以下のあたりです。
- 80〜250ms 前後:
クランチの奥行きを出すスラップ〜ショートディレイ領域。原音のすぐ後ろに「影」を付けるような使い方で、リズムギターにもリードにも合います。 - 300〜450ms 前後:
ロック系のリードソロに最適な「1拍〜1拍半」くらいの間隔。ハイが丸く、弾いていても耳に刺さらないので、ゲイン高めの歪みに足しても音が散らかりにくいです。 - 500ms 付近〜:
アンビエント寄りの長めディレイ。Mix を上げて Mod をオンにすると、にじむような揺れを伴ったテクスチャ系ディレイとして機能します。
リピートを重ねるごとにハイが落ちていくので、深くかけても原音を邪魔しにくいのがポイント。クリーン〜クランチのアルペジオでも、歪んだソロでも、「後ろにふわっといる残響」として自然に溶け込みます。
使い勝手・セッティングのイメージ
つまみ構成は非常にシンプルです。
- REGEN:リピート回数(フィードバック)
- MIX:原音に対するディレイ音の割合
- DELAY:ディレイタイム
- MOD スイッチ:リピート音へのモジュレーション ON/OFF(内部トリムで深さ/速さ調整)
代表的な使い方をいくつか。
スラップ〜ショートディレイ(クランチ常時オン用)
- DELAY:9〜10時(100〜150ms 前後のイメージ)
- MIX:9〜10時(うっすら聞こえる程度)
- REGEN:8〜9時(1〜2回軽く返る程度)
- MOD:OFF
クランチリズムやロック系のバッキングに常時うっすらかけておく設定です。ピッキングアタックのすぐ後ろに小さな残響が乗ることで、音に厚みと奥行きが出ます。
ロック・リード用ディレイ
- DELAY:11〜12時(300〜400ms 前後)
- MIX:10〜11時
- REGEN:10〜11時(2〜3回ほど自然に減衰)
- MOD:好みで ON / OFF(軽く揺らしたいなら ON)
単音リードの後ろに「歌うような残響」をつけるセッティングです。歪みとの相性が良く、ハイゲインでも音がうるさくなりにくいのが Carbon Copy の強みです。
アンビエント/シューゲイザー寄りセッティング
- DELAY:13〜15時(400〜600ms 近辺)
- MIX:11〜13時(ディレイ音を少し前に)
- REGEN:12〜14時(自己発振手前まで)
- MOD:ON(内部トリムで揺れをやや深めに)
リピートが重なりながら溶けていく“壁”のような残響を作りたいときの設定です。歪みやリバーブと組み合わせると、シューゲイザー/ポストロック的な広がりを簡単に作れます。
ノイズレベルはアナログディレイとして標準的で、極端にフィードバックを上げない限り、実用上大きな問題はありません。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- “暗め・太め”のアナログらしい残響
高域が丸く落ちるおかげで、歪みの後ろに足しても耳障りになりにくく、どのゲインレンジでも「邪魔をしない奥行き」を足せるのが大きな魅力です。 - 3ノブ+MOD のシンプルさで音決めが早い
多機能ディレイのようなモード選択やサブディビジョン設定がない分、「耳で聞いてスッと決める」タイプのペダル。現場でも直感的に追い込みやすいです。 - テープエコーライクな揺れを足せる MOD 機能
さりげなく揺れるモジュレーションは、テープエコーや古いディレイマシンのような“味”を足したいときにぴったり。内部トリムで自分好みの深さ・速さに調整できるのも玄人好みです。 - クランチ〜ドライブとの相性が非常に良い
ハイファイなデジタルディレイだと歪みと一緒に使うと音が散らかりがちですが、Carbon Copy はリピートが自然に引っ込んでくれるので、「とりあえず後段に挿しておけば仕事してくれる」タイプの1台です。
注意しておきたいポイント
- クリアな残響が欲しい人には暗く感じる可能性あり
原音と同じようなハイの抜け方でリピートしてほしい場合、デジタルディレイの方が向いています。Carbon Copy はあくまで「温かく暗めに溶ける」方向のキャラクターです。 - ディレイタイムはおおよそ耳で合わせるタイプ
タップテンポや細かいミリ秒指定はできません。クリックと厳密に合わせたい用途より、感覚的に合わせる現場向けです。 - 内部トリムの調整は多少の慣れが必要
MOD の揺れを追い込みたい場合、筐体を開けてトリムを触る必要があります。頻繁に変更したい人には少し手間かもしれません。 - モノラルのみ
入出力はモノラル1系統なので、ステレオ環境前提のボードでは、別のステレオディレイとの併用を考える必要があります。
機種の仕様
| メーカー | MXR |
| 製品名 | M169 Carbon Copy Analog Delay |
| エフェクトタイプ | アナログディレイ(BBD) |
| 搭載モード | ディレイタイム:おおよそ 20〜600ms アナログ BBD 素子によるウォームなリピート MOD 機能:リピートにコーラス/ヴィブラート的な揺れを付加(内部トリム調整可) |
| コントロール | REGEN:リピート回数(フィードバック量) MIX:原音に対するディレイ音のミックス量 DELAY:ディレイタイム MOD スイッチ:モジュレーション ON/OFF 内部トリム:モジュレーションの深さ/スピード調整用(筐体内部) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ライン入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V DC アダプター用ジャック(センターマイナス、2.1mm) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(センターマイナス) |
| 消費電流 | おおよそ 26 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:1 MΩ 出力インピーダンス:1 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:60 mm 前後 奥行:112 mm 前後 高さ:34 mm 前後 質量:約 410 g 前後(電池含む) |