王道ミッドブースト系オーバードライブ
Ibanez TS9 Tube Screamer は、80年代から現在までボードのど真ん中を守り続けている定番オーバードライブです。中域を押し出す“TS系ミッドハンプ”と、タイトなローエンドにより、クリーンアンプを軽く歪ませる用途から、ハイゲインアンプのブーストまで幅広く使える1台です。
[Ibanez] TS9 Tube Screamer|ペダマニレビュー
どんなペダル?
TS9 Tube Screamer は、初代 TS808 の流れを汲むクラシックなオーバードライブです。
現行 TS9 は、オリジナルに近い回路構成を保ちながら、量産や信頼性の面を現代仕様に調整したモデルで、いわゆる“TS系”サウンドの基準として語られることが多いペダルです。
ローをタイトに絞りつつ、中域を持ち上げる EQ カーブと、スムーズなオーバードライブ感が特徴で、単体でのクランチ用途だけでなく、ハイゲインアンプやディストーションの前に置く「ブースター」としての運用が非常にポピュラーです。
サウンドの特徴(王道ミッド強調系チューブスクリーマー)
TS9 のサウンドは、一言でいうと「ミッドが前に出るタイトなオーバードライブ」です。
- ローエンド:
低域はやや削られており、ブーミーになりにくいタイトな質感。7弦やドロップチューニングでも低音がダブつきにくく、リフを引き締める方向に働きます。 - 中域:
いわゆる“TSミッドハンプ”。ギターがバンドミックスの中で前に出てくる帯域が自然に持ち上がり、リードでもバッキングでも存在感を出しやすいサウンドです。 - 高域:
キツすぎない範囲でエッジがつき、ピッキングニュアンスがしっかり出ます。TONE を上げすぎると耳に痛くなることもあるので、ギターやアンプに合わせて11〜1時あたりが基準になりやすい印象です。
歪み量自体は中程度で、単体でメタル級のハイゲインにするペダルではありません。
「クランチ〜ライトディストーション」「ブーストしてアンプ側で歪みを稼ぐ」使い方がメインです。
使い勝手・セッティングのイメージ
つまみは DRIVE / TONE / LEVEL の3つだけで非常にシンプルです。
クランチ・リズム
- DRIVE:10〜11時
- TONE:11〜12時
- LEVEL:原音と同じか、やや持ち上げる
フェンダー系クリーンアンプを軽く歪ませたいときに便利な設定です。ピッキングの強弱でクリーン〜クランチの間をコントロールしやすく、ブルース〜ポップロックあたりのリズムに向きます。
ブースター運用(ハイゲインアンプ/ディストーションの前段)
- DRIVE:7〜9時(ほぼゼロ〜控えめ)
- TONE:11〜13時
- LEVEL:13〜15時
すでに歪んでいるアンプやディストーションペダルの前に挿し、ローを絞りつつ中域を押し出す設定です。
モダンメタル系ギタリストが「ロータイト・ミッド前出し」用に TS 系を使う定番パターンもこのイメージです。
リードトーン用クランチ
- DRIVE:12〜14時
- TONE:11〜12時
- LEVEL:バンド内で一歩前に出る程度に調整
クリーン〜ライトクランチのアンプを前提に、TS9側で歪みを足してリード寄りのサウンドにする使い方です。シングルコイルのストラトでも音が細くなりすぎず、歌うようなリードが作りやすいです。
電源面やノイズレベルは、一般的なアナログ OD として標準的で、9V 電池または AC アダプターで問題なく運用できます。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- “TS系”の基準となるサウンド
ほとんどのオーバードライブの説明で「TS系」「TS寄り」と比較対象にされるほど、基準的なキャラクターです。1台持っておくと、他のペダルを選ぶ際のリファレンスにもなります。 - ブースターとしての守備範囲が広い
ローを絞って中域を押し出す特性上、ハイゲインアンプの手前に置くことで「音程感がはっきりした歪み」に整えることができます。モダンメタル〜ハードロックまで、ジャンルを問わずブースターとして機能します。 - ミックスで埋もれにくい EQ カーブ
ミッドが自然に持ち上がっているため、バンド全体の中でギターがどこにいるか分かりやすく、ライブ現場でもモニターしやすい音です。スタジオ/ライブ問わず“使える音”というのは大きなアドバンテージです。 - シンプルで調整が早い
3ノブ構成なので、現場で音作りに迷いにくいのもポイントです。リハーサル中に TONE と LEVEL を少し触るだけで、バンドの音量や会場の特性に合わせた調整がしやすいです。
注意しておきたいポイント
- ローエンド重視のクランチには不向き
低域をかなりタイトにする特性のため、「太くどっしりしたクランチ」を作りたい人には物足りない場合があります。ローをしっかり残したいなら、別系統の OD や EQ との併用が必要です。 - ミッドのキャラクターが好みを分ける
ミッドが前に出る EQ カーブはメリットでもあり、好みが分かれるポイントでもあります。フラット〜モダン志向のドライブを求めている場合は、TS9 ではなく別のペダルを軸にする方がスムーズです。 - ハイゲイン単体ペダルとしては弱い
DRIVE をフルにしても、現代的なハイゲインディストーションほどの歪み量は出ません。あくまで「クランチ〜ミドルゲイン」「ブースト用途」が得意なポジションです。
機種の仕様
| メーカー | Ibanez |
| 製品名 | TS9 Tube Screamer |
| エフェクトタイプ | オーバードライブ(アナログ) |
| コントロール | DRIVE(歪み量) TONE(音色の明るさ) LEVEL(出力レベル) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V AC アダプター用ジャック(センターマイナス) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(センターマイナス、一般的な BOSS タイプ互換) |
| 消費電流 | おおよそ 6 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:500 kΩ 出力インピーダンス:10 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:74 mm 前後 奥行:124 mm 前後 高さ:53 mm 前後 質量:約 570 g 前後(電池含む) |