オリジナル系のなめらかなクラシック・チューブスクリーマ
Ibanez TS808 Tube Screamer は、初代 TS808 を現代に復刻した“元祖チューブスクリーマー”ポジションのオーバードライブです。TS9 よりもややスムーズでマイルドな歪みと、丸みのあるトップエンドが特徴で、クリーンをうっすら押し上げるブルース〜ロックの定番ペダルとして愛用されています。
[Ibanez] TS808 Tube Screamer|ペダマニレビュー
どんなペダル?
TS808 Tube Screamer は、1970年代末〜80年代初頭に登場したオリジナル TS808 をベースに、回路構成やパーツ選定をできる限り忠実に再現した復刻モデルです。
同じ TS 系列の TS9 と比べると、
- 出力レベルはやや控えめ
- 歪みの粒立ちは少し細かく、なめらか
- 高域が少し丸く、全体として“温かい”印象
といった方向性で、「いかにも TS なミッドハンプを持ちつつ、少しヴィンテージ寄りの質感」に振られています。
単体クランチで常時オンにしてしまうような使い方や、クリーン〜クランチの中間をギター側のボリュームでコントロールするような“手元勝負”のプレイスタイルと相性が良いペダルです。
サウンドの特徴(滑らかミッドハンプのヴィンテージ寄りTS)
TS808 のサウンドキャラクターをざっくり整理すると、以下のイメージです。
- ローエンド:
ローはタイトめで、低域を整理してくれる方向性。TS9 同様、ローを削ってモコつきを抑える設計ですが、TS808 の方がわずかにふくよかで、極端にスカスカにはなりません。 - 中域:
いわゆる TS ミッドハンプがしっかりありますが、TS9 よりも角が取れた印象で、歌モノのバッキングやリードに自然に馴染むタイプ。ブルース〜ポップス系のサウンドに気持ちよくハマります。 - 高域:
トップエンドは少し丸めで、「ジャリッ」としたエッジ感よりも“なめらかさ”優先。TONE を上げていっても、TS9 ほど耳に刺さらず、上品に抜ける印象です。
歪み量は TS9 と同等〜やや控えめですが、ゲインを上げたときの飽和感がスムーズで、シングルコイルでのリードでもガサつきにくいのが美点です。
使い勝手・セッティングのイメージ
コントロールは OVERDRIVE / TONE / LEVEL の3ノブ構成です。
TS9 や他 TS 系とほぼ同じ感覚で触れます。
クランチ常時オン(ブルース〜ポップロック向き)
- OVERDRIVE:9〜11時
- TONE:11〜12時
- LEVEL:原音と同じ〜わずかに上げる
フェンダー系クリーンアンプに挿しっぱなしで、手元とピッキングでクリーン〜クランチを行き来する想定のセッティングです。TS808 の丸いトップとミッドハンプが、トーンの“甘さ”を足してくれます。
クランチの厚み足し(すでに少し歪んだアンプを前提)
- OVERDRIVE:9〜10時
- TONE:10〜11時
- LEVEL:12〜13時
アンプを軽く歪ませた状態から、TS808 でミッドを押し出して「もう一段厚みを足す」用途です。TS9 ほどアタックが強調されない分、少し古めのロックやフュージョン寄りの質感になります。
リード寄りブースト(マイルドなソロトーン)
- OVERDRIVE:12〜14時
- TONE:11〜12時
- LEVEL:バンドミックスで一歩前に出る程度
ハイゲイン手前くらいのアンプに対して、艶やかなリードトーンを作る設定です。TS9 ブーストのような“カチッとしたメタル寄り”というより、「粘り気のあるロック〜ブルースリード」方向になります。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- “元祖 TS808 テイスト”のなめらかな歪み
TS9 より一段柔らかく、耳あたりの良いドライブ感は TS808 ならでは。クランチ常時オンのペダルとして、長時間弾いていても疲れにくいキャラクターです。 - ビンテージ〜クラシック寄りのサウンドメイクに強い
80s 以前のロック/ブルース系サウンドを狙うとき、TS9 よりも TS808 の方が雰囲気が出やすい場面があります。ストラト+フェンダー系アンプとの組み合わせは鉄板です。 - TS 系リファレンスとしての価値
TS9 と合わせて持っておくと、「よりタイトでアタッキーな TS9」「よりスムーズで丸い TS808」という軸で他のオーバードライブを評価できるので、エフェクター沼で迷子になりにくくなります。 - シンプルで現場向き
ノブ3つ/スイッチ1つだけなので、ライブ現場での調整も最小限で済みます。TS 系を初めて導入する人にも扱いやすい設計です。
注意しておきたいポイント
- 出力レベルは TS9 よりやや控えめ
いわゆる“ガッツリ・ブースター”として使う場合、TS9 の方が LEVEL に余裕を感じるケースがあります。TS808 はどちらかというと「音色を作る OD」としての性格が強めです。 - ミッドハンプが好みを分けるのは TS9 と同じ
中域が前に出る EQ カーブのため、フラット志向のモダンドライブを求める場合はそもそも方向性が違います。あくまで「TS 的なキャラクターが欲しいかどうか」で選ぶべきペダルです。 - ローエンド重視のモダンメタル用途には不向き
ローを締める設計なので、7弦/ドロップチューニングで“ローを出したい側”の用途とは相性が悪めです。その場合は別系統のブースターや EQ を組み合わせる必要があります。
機種の仕様
| メーカー | Ibanez |
| 製品名 | TS808 Tube Screamer |
| エフェクトタイプ | オーバードライブ(アナログ) |
| コントロール | OVERDRIVE(歪み量) TONE(音色の明るさ) LEVEL(出力レベル) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V AC アダプター用ジャック(センターマイナス) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(センターマイナス、一般的な BOSS タイプ互換) |
| 消費電流 | おおよそ 8 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:500 kΩ 出力インピーダンス:10 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:74 mm 前後 奥行:124 mm 前後 高さ:53 mm 前後 質量:約 570 g 前後(電池含む) |