Ring Thing は、リングモジュレーターを核にしつつ、シングルサイドバンド(上側波帯/下側波帯)やピッチシフトまでまとめた“音程系モジュレーションの実験室”です。BLEND を中心に、WAVE(波形)、FILTER/RATE、FINE/DEPTH、COARSE を組み合わせて、金属的な倍音の暴れから、音程が滑るような“動くハーモニー”、さらにエクスプレッションでのワーミー的ピッチ操作まで1台で対応。加えて9プリセット保存と自動チューニング(キャリア周波数を入力音に合わせる)があるので、「奇抜だけどライブで使える」落とし所を作りやすいのがポイントです。
[Electro-Harmonix] Ring Thing|ペダマニレビュー
どんなペダル?
Ring Thing は、4モード(RM:リングモジュレーション/UB:上側波帯/LB:下側波帯/PS:ピッチシフト)を切り替えて使う多機能ペダルです。リングモジュは「原音とキャリア周波数を掛け合わせて別の倍音成分を生む」ので、金属的・宇宙的・電子楽器的な音になりやすい。一方で Ring Thing はその“尖り”だけで終わらず、SSB(Single Sideband)で片側成分だけを取り出すことで、より音楽的に使える周波数シフトへ寄せられます。さらにPS(ピッチシフト)では、デチューン/ビブラート/コーラス的な揺れや、エクスプレッションでのワーミー的な上下まで狙えるのが守備範囲の広さです。
操作系は一見複雑ですが、実務的には「BLENDで原音とエフェクト量を決める → COARSE/FINEで周波数(またはピッチ量)を決める → WAVEとFILTER/RATEで質感を整える」の順にすると迷いにくいです。加えて、PRESET/TUNE フットスイッチでプリセット呼び出しができるので、“使う音だけ保存して現場は踏むだけ”の運用に落とし込みやすい。変態枠に見せかけて、ライブ対応の導線もちゃんと用意されているタイプです。
サウンドの特徴(“金属感”から“動くハーモニー”まで、音程系の異世界が足元に)
まずRM(リングモジュ)は、いわゆる「キーン」「ギャン」といった金属的倍音が王道。WAVE(波形)を変えるだけでも倍音の出方が大きく変わり、FILTER(ローパス)で耳に痛い成分を丸めたり、逆にギラつきを出したりできるので、ただ派手なだけでなく“混ぜられる音”に持っていけます。BLENDを抑えめにして薄く混ぜると、歪みやファズに“異物感”だけ足すような使い方も可能です。
UB/LB(シングルサイドバンド)は、リングモジュの派手さを“音楽的な周波数シフト”に寄せたモードで、ここがRing Thingの美味しいところ。原音の影が残りつつ、音程がズレるように動いていくため、コードでも「不思議だけど破綻しにくい」方向に収まりやすいです。ステレオ出力にして、片側波帯を左右に振ると、空間が“揺れる”独特の立体感が作れます。
PS(ピッチシフト)は、単なるオクターブではなく、デチューン〜ビブラート〜ワーミー的上下まで射程に入るタイプ。内部モジュレーション(RATE/DEPTH)を使うと、揺れものとしても成立しますし、エクスプレッションを繋げば「踏み込み量=ピッチ量」の運用ができるので、ソロの飛び道具としても強いです。
まとめると、Ring Thing は“変態音専用”ではなく、薄く混ぜてアレンジの色付けにするところから、がっつり主役にするところまでレンジが広いのが強みです。
使い勝手・セッティングのイメージ
定番リングモジュ(メタリックな倍音をコントロールして使う)
- MODE:RM
- BLEND:11〜13時
- COARSE:12時
- FINE/DEPTH:12時
- WAVE:11〜13時
- FILTER/RATE:13〜15時
リングモジュは帯域が暴れやすいので、FILTERを上げて耳に痛い成分を整理しながら作ると“曲で使える金属感”に寄せやすいです。COARSE/FINEは狙う周波数(=キャリアの高さ)の調整。最初は12時から動かして、気持ちいい“鳴りどころ”を探すのが早いです。
リングモジュをトレモロ寄りに(怪しい揺れを“リズム”として使う)
- MODE:RM
- BLEND:最大(17時)
- COARSE:9時以下
- FINE/DEPTH:11〜13時
- WAVE:好み(SINE寄りだと馴染みやすい)
- FILTER/RATE:13〜15時
BLENDを上げてCOARSEを低めにすると、リングモジュが“周期系”として働きやすく、トレモロ的な揺れになります。音色が派手すぎる時はFILTERで丸めると、リズムの効果だけ残って使いやすいです。
SSBで“動くハーモニー”(不思議だけど和音が成立しやすい)
- MODE:UB もしくは LB
- BLEND:12〜14時
- COARSE:11〜13時
- FINE/DEPTH:12時
- WAVE:12時付近
- FILTER/RATE:14〜17時
UB/LBは、リングモジュの派手さより“音程が滑る感じ”が前に出るので、コードやアルペジオでも雰囲気を作りやすいです。まずはWAVEを真ん中付近に置いて、COARSE/FINEで「動きが気持ちいい範囲」を探すと当たりが早いです。ステレオで左右に出すと、空間がねじれる感じが出て一気に“それっぽく”なります。
ピッチシフトでデチューン/コーラス風(薄く混ぜて太くする)
- MODE:PS
- BLEND:10〜12時
- COARSE:12時(必要なら少し上下)
- FINE/DEPTH:11〜13時
- FILTER/RATE:10〜12時(内部モジュON)
- WAVE:SINE寄り時
PSは“上げ下げ”より、薄く混ぜて太さを出す用途が実戦的です。FILTER/RATEを少し上げて内部モジュを薄くかけると、デチューン〜コーラス的な揺れになり、歪みの後段に置くと音像がまとまりやすいです。
ワーミー的ピッチ(エクスプレッションで一撃の演出)
- MODE:PS
- BLEND:14〜17時
- COARSE:上げたい/下げたい目標に合わせる(オクターブ系なら端寄り)
- FINE/DEPTH:12時
- FILTER/RATE:0(内部モジュOFF)
エクスプレッションを繋いで、つま先側を目標ピッチに設定する運用。FILTER/RATEは0にして揺れを消すと、ピッチ操作の意図がハッキリ出ます。ソロで“ここぞ”の一瞬だけ踏む用途に向きます。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- リングモジュを“使える音”に落とし込める調整幅
派手で終わりがちなリングモジュを、FILTERとBLENDで現場向けに整えられるのが強いです。飛び道具としてだけでなく、薄く混ぜて曲の空気を変える用途にも使えるので、結果的に出番が増えます。 - SSB(UB/LB)が“音楽的な異物感”として優秀
Ring Thingの真骨頂はUB/LBの周波数シフト感。和音でも雰囲気が崩れにくく、アンビエントやエレクトロだけでなく、ロックの間奏やイントロの質感作りにも刺さります。 - 9プリセット保存で、変態機材をライブ用にできる
尖った音ほど、現場で毎回作り直すのは事故の元です。お気に入りを保存して“踏むだけ”にできるので、変わり種なのに運用が現実的になります。
注意しておきたいポイント
- BLENDを上げすぎると、バンド内で“占有帯域”が大きくなる
リングモジュもSSBも情報量が増えるため、やりすぎると他パートとぶつかりやすいです。まずは薄め運用を基準にして、必要な場面だけ踏み込む方が成功率が上がります。 - 自動チューニングは単音前提。使いどころを割り切る
キャリア周波数を入力に合わせるTUNEは便利ですが、設計上は単音の基音を追う想定です。コードで合わせに行くより、狙いの単音で合わせて“その場の正解”を作る運用が安全です。 - 電源要求が重め。ボード電源計画に組み込む
消費電流が大きいクラスなので、分岐ケーブルで雑に取ると不安定要因になります。安定供給できる電源ポートを確保して、最初に電源まわりを固めるのが堅実です。
機種の仕様
| メーカー | Electro-Harmonix |
| 製品名 | Ring Thing Single Sideband Modulator |
| エフェクトタイプ | リングモジュレーター/シングルサイドバンド/ピッチシフター(デジタル) |
| バイパス方式 | バッファードバイパス |
| コントロール | BLEND:原音(DRY)とエフェクト音(WET)のミックス量 WAVE:変調波形の選択(モードにより作用が変化) FILTER/RATE:RM/UB/LB時はローパスフィルター、PS時はモジュレーションRATE FINE/DEPTH:RM/UB/LB/PS時の微調整(PSで内部モジュON時はDEPTH) COARSE:RM/UB/LB時はキャリア周波数、PS時はピッチ量(大まかなレンジ) MODE:RM/UB/LB/PSの選択、プリセットのスクロール PRESET/TUNE フットスイッチ:プリセット呼び出し/リングモジュ系の自動チューニング BYPASS フットスイッチ:ON/OFF切替(STATUS LED点灯) |
| 接続端子 | INST INPUT:標準フォーン(モノ入力) MOD INPUT:標準フォーン(外部オシレーター/モジュレーション入力) EXP INPUT:標準フォーンTRS(エクスプレッション/CV入力) OUTPUT MONO/L:標準フォーン(左/モノ) OUTPUT R:標準フォーン(右) DC IN:9V DC アダプター用ジャック(センターマイナス) |
| 電源 | AC アダプター(センターマイナス) ※電池駆動不可 |
| 消費電流 | おおよそ 190 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:500 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:121 mm 前後 奥行:146 mm 前後 高さ:64 mm 前後 質量:約 560 g 前後 |