Electro-Harmonix Big Muff Pi は、分厚いローエンドと途切れないロングサステインで、ロック〜オルタナの歴史に名を刻んだ定番ファズ/ディストーションです。単音リードを“歌うように”伸ばすリードトーンから、壁のような轟音リフまで守備範囲が広く、ギターだけでなくベース用としても定番的に使われてきました。現在は複数のバージョンが存在しますが、「ビッグマフらしい太さと伸び」は共通するキャラクターと言えます。
[Electro-Harmonix] Big Muff Pi|ペダマニレビュー
どんなペダル?
Big Muff Pi は、Electro-Harmonix を代表する歪みペダルで、70年代から現代に至るまで、数え切れないロックギタリストのボードに載ってきた“ファズ寄りディストーション”です。いわゆるファズフェイス系の暴れた倍音とは違い、ディストーション的なコンプレッション感と、ぶ厚いローエンド、なめらかなサステインが大きな特徴です。
つまみ構成は VOLUME、TONE、SUSTAIN の3ノブとシンプルで、SUSTAIN で歪み量とサスティン、TONE でロー〜ハイのバランス、VOLUME で全体のレベルを決めます。セッティング次第で、ざらっとした轟音リフから、シルクのように滑らかなリード、シューゲイザー的な壁サウンドまで作り分けられる懐の深さがあります。
オリジナル期から現在まで、Triangle、Ram’s Head、NYC、Russian など多数のバージョンが存在し、細かなキャラクターは異なりますが、「太くてなめらかなロングサステイン」という軸は共通しており、“ビッグマフらしさ”として認識されています。
サウンドの特徴(太く伸びるロングサステインと轟音ウォールサウンド)
Big Muff のサウンドは、一言でいうと「分厚くて、なめらかで、よく伸びるファズディストーション」です。SUSTAIN を上げると、ピッキング後も音が途切れずに伸び続け、チョーキングやロングトーンが歌うように続きます。倍音は豊かですが、ファズフェイス系のような“暴れる”感じよりも、コンプ感を伴ったなめらかな質感に寄っています。
ローエンドはかなり豊かで、パワーコードやリフを弾くと、アンプから“音の壁”が出てくるような感覚があります。TONE を下げていくとロー寄りのマフサウンドになり、上げていくとややジャキッとした抜け重視のセッティングになりますが、どの位置でも「中低域の厚み」がしっかり残るのがビッグマフらしいところです。
ノイズはハイゲインペダルらしくそれなりに出ますが、サステイン重視のリードや、オルタナ・シューゲイザーのような“鳴りっぱなし前提”のサウンドでは、それも含めてキャラクターの一部として扱われることが多い印象です。
使い勝手・セッティングのイメージ
分厚いリードトーン用“王道マフセッティング”
SUSTAIN:13〜15時
TONE:11〜13時(あまり極端に振らない)
VOLUME:バイパスより少し上
単音リードを太く、なめらかに伸ばしたいときの王道セッティングです。ローエンドと中域の厚みで音が前に出つつ、TONE を真ん中付近に保つことで、埋もれにくいリードトーンになります。アンプ側はクリーン〜軽いクランチ程度にしておくと、「アンプは土台、マフで味付け」というバランスが取りやすいです。
轟音リフ/シューゲイザー寄り“壁サウンド”セッティング
SUSTAIN:MAX 付近
TONE:10〜11時(ややロー寄り)
VOLUME:バンド全体に合わせて調整
パワーコードやローコードをかき鳴らしたときに、文字通り“壁のようなサウンド”を作るセッティングです。TONE を少し下げてローを多めにし、SUSTAIN を思い切って上げることで、音の塊が前に出てきます。シューゲイザー的な重ね録りや、バンドでの轟音パートに向いたセッティングです。
ベース用“ローを活かしたマフサウンド”
SUSTAIN:11〜13時
TONE:9〜11時(ロー寄りだが、輪郭が残る位置を探す)
VOLUME:原音と同程度
ベースで使う場合は、ローエンドを活かしつつ、輪郭が完全に埋もれないポイントを探すのが鍵です。TONE を下げ過ぎるとモワっとしやすいので、指弾き/ピック弾きやアンサンブルに合わせて微調整しつつ、コンプ感とローの厚みを活かした“ベースマフサウンド”を狙うイメージになります。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- 太さとサステインを同時に稼げる“マフならではの歪みキャラクター”
Big Muff は、単に歪むだけでなく、「太さ」「なめらかさ」「ロングサステイン」の3つを同時に稼げるペダルです。シングルノートのリードを弾くだけで、音数が少なくても存在感が出やすく、リフでもバッキングでも“音の大きさ”を感じさせられるのが、大型アンプを押し込んだようなマフならではの魅力です。 - オルタナやシューゲイザーの“マストアイテム”としての実績
グランジ〜オルタナ、シューゲイザー系のバンドサウンドには、ビッグマフ系のサウンドがほぼ定番のように使われてきました。ディレイやリバーブ、モジュレーションと組み合わせて、壁のようなテクスチャを作るときの“歪みの土台”として非常に優秀で、ジャンル的にハマる人には一気に欠かせない存在になります。 - 多彩なバリエーションや派生機種を生み出した元祖としての存在感
Triangle、Ram’s Head、Russian、NYC など、時代や生産地による違いから、ビッグマフだけで一つの“沼”が形成されています。さらに、各社クローンや派生機種も山ほど存在しており、「どのマフが自分好みか」を探す楽しみも大きなポイントです。その元祖としての Big Muff Pi は、やはり一度は触っておきたい一台と言えます。
注意しておきたいポイント
- ローエンドが出過ぎるとアンサンブルで“埋もれる/モワつく”こともある
ビッグマフの魅力でもある豊かなローエンドは、場合によってはバンドアンサンブルで低域過多になり、ベースやキックとぶつかってしまうことがあります。TONE ノブやアンプ側のイコライザーでローを少し整理する、他の楽器とのバランスを聞きながら設定する、といった工夫が必要です。 - “抜ける歪み”というより“塊で押し出す”方向のキャラクター
TS 系や一部のオーバードライブのように、ミッドをグッと押し出して抜けを作るタイプではなく、音の塊で押すタイプの歪みなので、曲やアレンジによっては他パートとの棲み分けが難しい場面もあります。ソロ用には別のブースターやオーバードライブを組み合わせるなど、役割分担を考えてボードに組み込むと扱いやすくなります。 - 静かな曲やクリーン多めのセットでは“オーバースペック”になりがち
Big Muff は基本的にハイゲイン寄りのペダルなので、クリーン中心のポップスやアコースティック寄りの現場では、出番が限られる可能性があります。汎用性重視の1台目としてよりも、「轟音パート用」「オルタナ/シューゲイザー用」と割り切って導入した方が、機材整理の観点からも後悔が少ないはずです。
機種の仕様
| メーカー | Electro-Harmonix |
| 製品名 | Big Muff Pi |
| エフェクトタイプ | ファズ/ディストーション |
| コントロール | VOLUME:出力レベル TONE:音色バランス(ロー寄り〜ハイ寄りを連続的に調整) SUSTAIN:歪み量とサステイン量の調整 |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ライン入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V DC アダプター用ジャック(センターマイナス) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(センターマイナス) |
| 消費電流 | おおよそ 3 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:130 kΩ 出力インピーダンス:25 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:139 mm 前後 奥行:173 mm 前後 高さ:73 mm 前後 質量:約 700 g 前後(電池含む) |