レイテンシーなしで鳴らせるコンパクト・ギターシンセ
BOSS SY-1 Guitar Synthesizer は、ピックアップ交換や特別な配線なしで使えるコンパクトタイプのギター/ベース用シンセペダルです。11種類×11バリエーション、合計121タイプのサウンドをポリフォニックで発音でき、レイテンシーをほとんど感じない弾き心地が特徴。ロックやポップスのちょい足しから、アンビエント/シネマティックなサウンドメイクまで、ペダルボードに1台差すだけで表現の幅を一気に広げてくれます。
[BOSS] SY-1 Guitar Synthesizer|ペダマニレビュー
どんなペダル?
SY-1 は、「ギターシンセの面倒くささ」を極力排除したBOSSのコンパクトシンセです。
従来のギターシンセは専用ピックアップや13ピンケーブルが必要だったり、トラッキングの遅れが気になったりと、導入ハードルが高めでしたが、SY-1 は通常のシールドでそのまま接続するだけ。ギター/ベースの入力モードを切り替えるだけで、どちらにも対応します。
サウンドタイプは、リード系、パッド系、ストリングス、オルガン、ベースシンセ、シーケンス風パターンなどかなり広範囲。TYPEとVARIATIONの2つのノブで大枠とキャラクターを選び、TONE/RATEやDEPTH、DIRECT/ EFFECTのブレンドで細かく追い込む構成なので、
- 深掘りすればかなり作り込める
- とはいえ、「とりあえず回していくと使える音が出る」
というバランスになっています。
サウンドの特徴(レイテンシー感の少ないポリフォニック・シンセ)
SY-1 の大きな特徴は、「普通に弾いても違和感の少ない追従性」と「ポリフォニック対応」です。
- 単音リードはもちろん、コードやアルペジオでもトラッキングが破綻しにくい
- 低音域を含むフレーズでも、音の追従が早く、タイム感を崩さない
- サウンド自体は“完全なアナログシンセ”というより、ギターと相性の良いハイブリッドな質感
音色の傾向は大きく分けるとこんなイメージです。
- LEAD 系:シンセソロ向きの太いリードトーン。ロック寄りからフュージョン系までカバー。
- PAD / STRING 系:アンビエントな広がりを持ったパッド系。ディレイ/リバーブと組み合わせると、ワンコードでも背景を埋められるようなテクスチャーが作れます。
- BASS 系:シンセベース〜FM風の硬いベースまで。ギターで弾いてもベース的な役割を補えます。
- SEQ / ARP 系:シーケンサー風のパターンやアルペジオ的な動き。バンドアンサンブルの中で「耳を引くガジェット」的な使い方がしやすいゾーンです。
「超リアルなアナログモデリング」というよりは、ライブでも扱いやすい実用帯にチューニングされたシンセサウンドという印象で、バンドサウンドに馴染みやすいのがポイントです。
使い勝手・セッティングのイメージ
ノブ構成は BOSSコンパクトとしては情報量多めですが、役割は分かりやすい部類です。
- TYPE ノブ:サウンドの系統(リード/パッド/ベース/オルガン/SEQ など)
- VARIATION ノブ:同系統内のキャラクター違いを選択(11種類)
- TONE / RATE:フィルター感や明るさ、モジュレーション/パターンの速さなど
- DEPTH:揺れやエフェクトの深さ
- EFFECT:シンセ音のレベル
- DIRECT:原音のレベル
- MODE 切替:GUITAR / BASS など入力に応じた最適化
代表的な使い方をいくつか。
クリーン+パッドの「なんちゃってシンセギター」
- TYPE:PAD 系
- VARIATION:ウォーム寄りのパッド
- DIRECT:12〜1時(原音も混ぜる)
- EFFECT:12〜2時(シンセをやや前に)
- TONE:11〜12時(明るすぎない位置)
- DEPTH:1〜2時
アンプはクリーン、後段にディレイとリバーブを繋ぐと、ワンコードでも十分“空気”を作れるアンビエント系サウンドになります。コードもアルペジオも違和感少なめで弾けるのがSY-1の強みです。
シンセリード的ソロ用ブースト
- TYPE:LEAD/BASS系の太めのサウンド
- DIRECT:0〜9時(原音はごく少なめ、もしくはカット)
- EFFECT:14〜15時(シンセを前面に)
- TONE:12〜14時(存在感を出す)
歪みペダルの後段、ディレイの前あたりに挿して、ソロのときだけ踏む想定です。ギターソロの代わりにシンセソロを差し込むようなアレンジに向きます。
ベースでのシンセベース用途
- MODE:BASS
- TYPE:BASS/SEQ 系
- DIRECT:11〜12時(少し原音を混ぜてアタックを残す)
- EFFECT:13〜15時
- TONE:ベースのキャラクターに合わせて微調整
リズム隊としての芯を残しつつ、ローを太くキープしたままシンセ的なうねりを足せます。ファンク〜ネオソウルっぽい場面で有効です。
ペダマニ的「ここが魅力」
- 特別なピックアップ不要で“普通のコンパクト”として扱える
13ピンケーブルや専用ピックアップが要らないので、既存ボードにもそのまま組み込みやすいです。撤去も簡単なので、「まずは1台試してみる」にはちょうど良い仕様。 - レイテンシー感の少ない弾き心地
コードや速いフレーズでも、トラッキングによる“遅れ”が目立ちにくい設計で、普段のプレイフィールを崩さずにシンセサウンドを足せます。 - 原音とのブレンドで“シンセ過ぎない”サウンドが作りやすい
DIRECTとEFFECTのバランスを変えるだけで、「ほぼギター+ちょいシンセ」から「ほぼシンセ」にまで振れるため、バンド内の役割や曲調に応じた細かい調整がしやすいです。 - アンビエント〜ポストロック系の“背景づくり”に最適
パッド/ストリングス系サウンドにディレイとリバーブを組み合わせると、ギター1本でもトラックの背景を埋められます。インスト系やBGM制作的な用途にもハマるペダルです。
注意しておきたいポイント
- 「本格的なシンセプログラミング」を求めると物足りないかも
オシレーターの波形やフィルター構成をゼロから組むような“シンセいじり”というよりは、あくまで「プリセットとバリエーションを軸にしたギター用シンセ」です。細かい音作りより、現場即戦力のプリセット重視の設計になっています。 - 音数が多いバンドでは抜け方の調整が必須
シンセパッド系は厚みがある分、バンドサウンドによっては“埋もれる/埋めすぎる”どちらにも振れやすいです。TONEやDIRECTレベルで、リハ時にしっかり抜け方を追い込んでおく必要があります。 - ピッキングニュアンスはある程度揃える必要がある
強弱がバラバラな演奏だと、シンセの反応もやや不安定になる場面があります。クリーンな立ち上がりを意識したピッキングの方が、SY-1の性能を活かしやすいです。
機種の仕様
| メーカー | BOSS |
| 製品名 | SY-1 Guitar Synthesizer |
| エフェクトタイプ | ギター/ベース用シンセサイザー(ポリフォニック) |
| 搭載モード | サウンドタイプ:11カテゴリー(LEAD、PAD、STR、ORG、BASS、SEQ など) 各タイプにつき11バリエーション、合計121サウンド ギター/ベースモード切り替え ポリフォニック対応(コード/アルペジオも追従) |
| コントロール | TYPE ノブ(サウンドカテゴリー選択) VARIATION ノブ(各カテゴリー内のバリエーション選択) TONE / RATE ノブ(フィルター/明るさ、モジュレーションやパターンのスピード) DEPTH ノブ(効果の深さ) EFFECT ノブ(シンセ音のレベル) DIRECT ノブ(原音レベル) MODE / INPUT切り替え(GUITAR/BASS など) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ベース入力) SEND / RETURN:エフェクトループ用端子(SY-1前後に他ペダルを組み込む用) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) EXP/CTL:外部エクスプレッション/フットスイッチ用 DC IN:9V AC アダプター用ジャック(BOSS PSA シリーズ対応) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(PSA-100/PSAシリーズ) |
| 消費電流 | おおよそ 115 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 規定入力レベル:-20 dBu 入力インピーダンス:1 MΩ 規定出力レベル:-20 dBu 出力インピーダンス:1 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:73 mm 前後 奥行:129 mm 前後 高さ:59 mm 前後 質量:約 450 g 前後 |