原音の輪郭を崩さず広がりだけを足すステレオ空間ペダル
BOSS DC-2W Dimension は、名機 Dimension C / Dimension D のサウンドを継承した Waza Craft シリーズのステレオ空間系ペダルです。4つのプッシュボタンと2つのモード切り替えにより、原音の輪郭を崩さずに広がりと奥行きを付加する独特のコーラス効果を実現。常時オンで「なんとなく良くなる」タイプの空間ペダルとして、クリーンからクランチまで幅広いセッティングに対応します。
[BOSS] DC-2W Dimension(Waza Craft)|ペダマニレビュー
どんなペダル?
DC-2W は、世界中のレコーディング現場で使われてきたラック機 Dimension D(SDD-320)と、そのコンパクト版 Dimension C(DC-2)を現代仕様でまとめたペダルです。
一般的なコーラスと違い、LFOやディレイタイムをノブでいじるのではなく、4つのプリセットボタンの組み合わせでサウンドを選ぶスタイル。音量感と輪郭はほぼそのままに、ステレオ感と奥行きだけがスッと足されるような処理をするのが最大の特徴です。
結果として「エフェクト感を強く出さずに、トラック全体のクオリティを底上げする」タイプのペダルで、クリーンギターはもちろん、クランチ、キーボード、アコギにも違和感なく使えます。BOSSらしい実務機寄りのキャラクターです。
サウンドの特徴(存在感はそのままに“広がりだけ”足す立体コーラス)
DC-2W のサウンドは「コーラス」と呼ばれつつも、いわゆる CH-1 や CE-2W のような明確な揺れとは少し異なります。
- ピッチの揺れは最小限
- 原音のセンターはしっかり残る
- サイドに“もう一回り大きい自分”がにじむイメージ
というような立体感の出方で、「よく聴くとコーラスっぽいが、ぱっと聴きは“良いライン録りっぽい音”」という印象に落ち着きます。
【DC-2(STANDARD)モード】
コンパクトの Dimension C をベースにしたモード。
ギター用としてバランスが良く、4ボタンそれぞれが「薄く〜やや強め」のかかり具合に分かれている感覚です。クリーンのカッティングやアルペジオにかけると、音数を増やさなくてもトラックが埋まりやすくなります。
【SDD-320(S)モード】
ラック機 Dimension D を意識したモード。
レンジが広く、ステレオ感も強く出るため、2アンプやラインステレオで真価を発揮します。クリーンギターだけでなく、シンセやエレピにも相性が良く、「高級コンプ+空間処理を一発で通した」ようなリッチさになります。
ボタンを押していくほど効果が深くなりますが、最大設定でも“やりすぎ”になりにくいよう設計されており、基本的にはどのモードも現場でそのまま使えるキャラクターです。
使い勝手・セッティングのイメージ
コントロールは非常にシンプルです。
- 4つのモードボタン(1〜4)
- MODEスイッチ:STANDARD(DC-2) / SDD-320(ラック系)
- ボタンの複数同時押しも可能(中間的な効き具合になる)
【常時オン用の“ちょい足しディメンション”】
- MODE:STANDARD
- ボタン:1のみ ON
クリーン/クランチ両対応の軽いディメンション。
センターの芯はしっかり維持しつつ、ステレオの広がりだけがふわっと足されます。常時オン前提なら、まずはこのあたりから試すのが無難です。
【シティポップ系クリーン/コーラスクリーン】
- MODE:STANDARD または SDD-320
- ボタン:2、もしくは1+2
ストラトのクリーンでコードを鳴らすと、「スタジオ録りっぽい厚み」が一気に出る設定です。
2だけだと素直な広がり、1+2にするとやや強めで、アルペジオやバッキングを一歩前に出したいときに向きます。
【広がり重視のステレオセッティング】
- MODE:SDD-320
- ボタン:3 または 2+3
2台のアンプやステレオリターンで使う場合におすすめの設定。
コードを薄く鳴らしているだけでも、左右に大きな空間が広がります。シューゲイザーやアンビエント寄りのサウンドメイクにも相性が良いです。
【ビブラート/モジュレーション濃いめ派なら他ペダル併用も視野】
DC-2W 自体は“過度に揺らす”タイプではないので、もっと分かりやすいモジュレーションが欲しい場合は、CE-2W や CH-1 と併用して、「仕上げの立体感付け」として最後段に入れる構成も現場ではよく使われるパターンです。
ペダマニ的「ここが魅力」
- 原音のキャラはそのまま、“いい意味での加工感”だけを足せる
歪みやアンプのキャラクターを崩さずに、ステレオ感と奥行きだけを上乗せできるので、「とりあえず全部これに通しておきたい」と思えるタイプの実務機です。 - ノブ迷子にならないプリセット方式
RATE/DEPTH/MIX のバランスを自分で追い込む必要がなく、「ボタンを押してみて一番気持ちいいところを選ぶ」だけで決まるのは、現場志向のプレイヤーにとってかなりの時短になります。 - ギターだけでなくキーボードやアコギにも流用しやすい
コーラスとしてのクセが薄く、“空間処理+わずかなモジュレーション”という立ち位置なので、エレピ、シンセ、アコギのラインにも違和感なく使えます。宅録用の“なんでも良くする箱”としてボード外でも活躍します。 - CE-2W とは違う、もう一つのBOSSコーラス基準
「揺れで聴かせるCE-2W」「気付かれない程度に良くするDC-2W」という分担がはっきりしているため、コーラスを2台積みする場合もキャラクターが被りにくいです。
注意しておきたいポイント
- 「コーラスしてる感」を強く出したい人には物足りないかも
CE-2W や CE-5 のような明確な揺れを求めると、「かかってるのか分かりにくい」と感じる可能性があります。あくまで“質感を底上げする”タイプだと割り切った方がしっくりきます。 - 単体で試奏すると良さが伝わりにくい
単音やソロギターだけで弾いていると「そこまで劇的ではない」印象ですが、バンドミックスや録音で他のトラックと混ざった時に真価が出るタイプです。購入前にスタジオやデモで“バンド中の位置”を意識してチェックしたいペダルです。 - ステレオ前提の設定は、モノラル環境では差が小さい
アンプ1台やモノPAの現場では、SDD-320モード+深めのボタン設定でも、ステレオほどの広がりは得られません。その場合はボタン2〜3あたりを使い、やや深めにかける意識を持つと効果を感じやすくなります。
機種の仕様
| メーカー | BOSS |
| 製品名 | DC-2W Dimension(Waza Craft) |
| エフェクトタイプ | アナログコーラス(BBD方式) |
| モード | STANDARD(DC-2)、SDD-320(Dimension D) |
| コントロール | モード・ボタン:1 / 2 / 3 / 4(各ボタン単独および組み合わせ) モード・スイッチ:STANDARD / SDD-320 ※LEVEL / RATE / DEPTH は内部的に最適化されており、ユーザーが直接調整するノブはありません。 |
| 接続端子 | INPUT A(MONO):標準フォーン入力 INPUT B:標準フォーン入力(ステレオ運用時) OUTPUT A(MONO):標準フォーン出力 OUTPUT B:標準フォーン出力(ステレオ運用時) DC IN:9V AC アダプター用ジャック(BOSS PSA シリーズ対応) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(PSA-100/PSAシリーズ) |
| 消費電流 | おおよそ 65 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 規定入力レベル:-20 dBu 入力インピーダンス:1 MΩ 規定出力レベル:-20 dBu 出力インピーダンス:1 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:73 mm 前後 奥行:129 mm 前後 高さ:59 mm 前後 質量:約 450 g 前後(電池含む) |