Fender Full Moon Distortion は、ヘヴィ寄りのハイゲイン・ディストーションを主役にしつつ、現場で“破綻しにくい音”へ寄せるための調整機能を盛り込んだモデルです。Texture でクリッピング(対称/非対称)を切り替え、Bite でアッパーミッドと倍音の押し出しを調整。さらに Bass/Middle/Treble に加えて Hi-Treble を備えた4バンドEQで、ハイゲイン特有の「キンキンしすぎ」「ローがボワつく」「抜けない」を短時間で潰せます。2つ目のフットスイッチは最大12dBのポストゲイン・ブーストとして機能し、ソロ時に“音量だけでなく前に出る帯域”も一緒に作りやすいのが実戦的。ハイゲインを気持ちよく鳴らしつつ、ステージやスタジオでの再現性も取りたい人向けの1台です。
[Fender] Full Moon Distortion|ペダマニレビュー
どんなペダル?
Full Moon Distortion は「とにかく歪む」だけのハイゲインではなく、“歪ませた上で整える”ところまでをペダル側で完結させやすい設計です。ハイゲインは出力先(アンプ/スタジオのJC/リターン/IR環境)で評価が割れやすいですが、このペダルは EQ とスイッチが多く、環境差を吸収して“狙った場所に着地させる”のが得意です。
基本の操作はシンプルで、GAIN で歪み量と飽和感を決め、LEVEL で最終音量を合わせます。そこから、Bass/Middle/Treble で全体バランスを整え、最後に Hi-Treble で「ハイゲインの上モノ(ザラつき・金属的な成分)」を丸めたり、必要な分だけ“スizzle(きらびやかさ)”を混ぜたりできます。ハイゲインでありがちな“EQで直しても耳が痛い”を、Hi-Treble が別レイヤーで扱えるのが実務的です。
もう一つの武器が Boost。ブーストは独立ノブで量を決め、フットスイッチで踏み分ける構成です。ソロで音量を上げたいときに、プリセット切替を使わず“踏むだけ”で上がる導線が作れます。ライブで「ここだけ一歩前へ」を作る用途に強いタイプです。
サウンドの特徴(ハイゲインでも“抜けと輪郭”を作りやすい)
Full Moon の核は、ヘヴィ向けの歪み量と密度を持ちながら、音が団子になりにくい方向へ寄せられることです。ハイゲインはローが飽和すると輪郭が溶け、ハイが立ちすぎると耳に痛くなります。ここを Bass/Middle/Treble だけで追い込むと極端になりがちですが、Hi-Treble が“上の成分だけ”を別に整えてくれるので、歪みの密度を保ったまま聴感を整えやすいです。
Texture は歪みの質感を切り替えるスイッチで、同じ設定でもコンプレッション感や歪みの“まとまり方”が変わります。バッキングで塊を作りたいのか、リードで粒立ちを残したいのか、目的に合わせて方向性を切り替えられます。Bite はアッパーミッドと倍音側に働き、ピッキングの芯を前に押し出すイメージ。ローがボワつきやすい環境でも、Bite を使うと“抜ける帯域”が確保しやすく、刻みの存在感が出しやすいです。
結果として、フルレンジ環境で鳴らしても「高域が痛い/ローが暴れる」になりにくく、アンプ入力でも“必要以上にこもる”事故を回避しやすい。ハイゲインを気持ちよく鳴らしつつ、最終的にバンド内で使える位置へ着地させやすいのが、このペダルの実力です。
使い勝手・セッティングのイメージ
王道ハイゲイン・リフ
- GAIN:13〜15時
- BASS:12〜13時
- MIDDLE:11〜13時
- TREBLE:11〜13時
- HI-TREBLE:10〜12時
- Bite:必要ならON
- Texture:まずは片側で基準を作り、もう片側で質感比較
ローが膨らむならBASSを少し戻し、代わりにMIDDLEを少し上げると“前に出る重さ”になりやすいです。耳が痛い場合はTREBLEより先にHI-TREBLEを下げると、密度を崩しにくいです。
ソロ用
- GAIN:12〜14時
- EQ:リフ用のままでもOK
- BOOST:12〜15時(会場で調整)
ブーストはポストゲインなので、音量を上げたいときに直感的です。ソロで埋もれる場合は、BOOSTを上げる前にBiteをONにして“前に出る帯域”を作ってから音量を上げると、ただうるさいだけになりにくいです。
抜け重視のザクザク
- GAIN:11〜13時
- BASS:10〜12時
- MIDDLE:12〜14時
- TREBLE:12〜14時
- HI-TREBLE:11〜13時
- Bite:ON推奨
ローを整理してミッドで押し出す方向です。バンド内で「ギターが奥に下がる」問題を、音量ではなく帯域で解決しやすいセッティングです。
太めのリード
- GAIN:13〜15時
- BASS:12〜14時
- MIDDLE:12〜14時
- TREBLE:10〜12時
- HI-TREBLE:9〜11時
リードで耳当たりを整えつつ、粘りと太さを出す方向です。ハイが荒れるならHI-TREBLEを優先して抑えると、歪みの密度が残りやすいです。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- “ハイゲインを整える”ための4バンドEQが実戦的
ハイゲインは環境で高域が刺さったり、ローが暴れたりしやすいですが、Bass/Middle/Trebleに加えてHi-Trebleがあることで、密度を保ったまま聴感だけを整えやすいです。結果として「歪みは気持ちいいのに使える音」に着地しやすく、リハ〜本番の修正が速くなります。 - Texture/Biteで“方向性”をスイッチで切り替えられる
ノブを大きく動かさず、歪みの質感と抜けの方向を切替できるのが便利です。特にBiteはアッパーミッドを前に出しやすく、刻みやソロで「抜けない」を短時間で解決しやすい設計です。 - 最大12dBのブーストで、ライブ導線が作りやすい
2つ目のフットスイッチが“踏むだけの音量アップ”として機能するので、プリセット切替や外部ブースターに頼らずソロ導線を組めます。歪みペダルの中で完結できるのは、ボード運用の手間を確実に減らします。
注意しておきたいポイント
- EQの可変幅が広いぶん、“動かしすぎ”で迷子になりやすい
ツマミが多いのは強みですが、最初から全部を動かすと判断基準が崩れます。まずはGAIN/LEVELを決め、次にBass/Middle/Trebleで全体を整え、最後にHi-Trebleで聴感を仕上げる順にすると、短時間で正解に寄せやすいです。 - Biteは効きが強いので、出力先次第では“硬さ”が出る
抜けを作るのに有効ですが、アンプやスピーカーが明るい環境では、アタックが強く出すぎて硬く感じることがあります。その場合はBiteをOFFに戻すか、Hi-Trebleを少し下げて“刺さりだけ”を抑えるとまとまりやすいです。 - ブーストは“単体だけ”では使えない運用になる
ブーストは便利ですが、歪みをバイパスした状態でブーストだけを踏める運用にはならないケースがあります。クリーン時にも独立ブースターが必要な人は、役割分担(クリーン用ブースター/歪み内蔵ブースト)を先に決めておくとボード設計が安定します。
機種の仕様
| メーカー | Fender |
| 製品名 | Full Moon Distortion |
| エフェクトタイプ | ディストーション |
| バイパス方式 | トゥルーバイパス |
| コントロール | LEVEL:全体音量 GAIN:歪み量 BASS:低域の調整 MIDDLE:中域の調整 TREBLE:高域の調整 HI-TREBLE:超高域の調整 BOOST:ブースト量 TEXTUREスイッチ:クリッピング切替 BITEスイッチ:アッパー帯域のゲイン付加 |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V AC アダプター用ジャック(センターマイナス) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(センターマイナス) |
| 消費電流 | おおよそ 110 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:500 kΩ 出力インピーダンス:10 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:95 mm 前後 奥行:125 mm 前後 高さ:64 mm 前後 質量:約 540 g 前後 |