MXR M108S 10 Band EQ は、31.25Hz〜16kHzの10帯域を±12dBでブースト/カットできるグラフィックEQです。各帯域に加えて INPUT GAIN と OUTPUT VOLUME を独立スライダーで操作できるため、「音の補正」と「レベル管理(ブースト/ユニティ調整)」を1台で完結しやすいのが魅力。さらにノイズリダクション回路、トゥルーバイパス、2アウト(2系統出し)を備え、ライブ/スタジオでの再現性を上げる“実務的なEQ”としてボードに常駐させやすいモデルです。
[MXR] M108S 10 Band EQ|ペダマニレビュー
どんなペダル?
M108S は、スライダーで帯域ごとの量を直感的に上下できる「グラフィックEQ」です。歪み系のようにキャラクターを付け足すより、出音の“情報整理”をして完成度を上げるタイプの機材で、やれることは大きく3つに分かれます。
1つ目は、会場・アンプ・キャビ・ボード構成で崩れたバランスの補正です。ローが膨らむ/耳に痛い帯域が出る/バンド内で埋もれる、といった“現場あるある”を、狙った帯域だけ動かして最短で整えられます。2つ目は、歪みの前段に置いて「歪み方そのもの」をコントロールする使い方。特定帯域を押して歪みの芯を作ったり、逆にモコつきを削ってタイトにしたりできます。3つ目は、INPUT GAIN と OUTPUT VOLUME を使ったレベル運用で、ソロブーストや「次段を押す」ブースターとしても扱える点です。
また、2アウト仕様なので、2台アンプ/2系統(例えばPA用とアンプ用)に分ける運用も組みやすい。EQは地味に見えますが、ボード全体の“勝率”を上げる裏方として、最終的に手放しにくくなるタイプのペダルです。
サウンドの特徴(“音作り”というより“音の整理”で勝つEQ)
M108S の核は、10帯域が「ギター/ベースで実際に効くポイント」に並んでいることです。31.25Hz〜16kHzをカバーしつつ、各スライダーの効きは±12dB。必要以上に暴れず、しかし“効かせたいところには効く”レンジ感なので、現場での微調整がやりやすいです。
帯域の目安としては、超ロー(31.25/62.5)は不要な膨らみを整理して低域の輪郭を出すのに有効。ロー(125/250)は太さや箱鳴り感の印象を左右し、触りすぎるとバンド内で濁りやすい帯域でもあります。ローミッド〜ミッド(500/1k)は“前に出るか埋もれるか”の境界線で、ここを少し整えるだけで抜けが変わることが多い。ハイミッド(2k/4k)はアタックや歯切れ、ピッキングの明瞭さに直結し、上げすぎると耳に刺さりやすいポイント。高域(8k/16k)は空気感や抜けの印象を作れますが、直出し/FRFR環境ではノイズやヒスも持ち上がるので、ブーストより整理の方が効くケースもあります。
そして“実戦で効く”のが、INPUT GAIN と OUTPUT VOLUME の存在です。EQで帯域を動かすと、どうしても総合レベルが変わりますが、ここを別スライダーで管理できるので、ユニティ合わせが速い。さらに、INPUT側で押して次段の歪みを気持ちよくさせる、OUTPUT側で踏んだ瞬間だけ前に出す、といった役割分担も組めます。EQにありがちな「良い音だけど音量がバラつく」を現場で起こしにくい設計です。
ノイズリダクション回路と18V駆動のヘッドルームも含め、M108Sは“音を盛る”より“音を成立させる”方向で強い。弾いて気持ちいいだけでなく、PAやバンドアンサンブルの中で結果が出るタイプのEQです。
使い勝手・セッティングのイメージ
EQは「動かしすぎない」が勝ち筋です。まずは全スライダーを 0dB(センター)にして、①問題の帯域を見つける → ②少しだけ動かす → ③INPUT/OUTPUTでバランスを取る、の順にすると迷いにくいです。
“モコつき”を取って、コードの分離を上げる(歪みの後段におすすめ)
- 250Hz:-2〜-4dB
- 500Hz:-1〜-3dB
- 2kHz:+1〜+3dB
- OUTPUT VOLUME:音量が下がった分だけ少し上げてユニティ調整
歪みの“団子感”が出る時に効く定番処方です。削りすぎると痩せるので、まず250Hzから小さく動かすのが安全です。
ソロで“抜け”を作る踏みっぱなしブースト(後段 or ループ運用向き)
- 1kHz:+1〜+2dB
- 2kHz:+1〜+3dB
- 125Hz:-1〜-2dB(必要なら)
- OUTPUT VOLUME:+1〜+3dB程度(バンド内で一歩前へ)
帯域ブースト+レベルで「前に出る」を作る方法。2kを上げすぎると刺さるので、1kとセットで少しずつが失敗しにくいです。
ハムバッカーのローを締めて、タイトなリフに寄せる(歪み前におすすめ)
- 31.25Hz:-3〜-6dB
- 62.5Hz:-2〜-4dB
- 125Hz:-1〜-3dB
- INPUT GAIN:必要なら+1〜+3dB(歪みのノリを足す)
ローの“だぶつき”が減ると、歪みが速く聴こえます。メタル寄りの刻みや、ローが膨らむアンプで特に効きます。
クリーンの“腰”を作って、バッキングを存在感ある音に(クリーン〜クランチ向き)
- 250Hz:+1〜+3dB
- 500Hz:+1〜+2dB
- 8kHz:-1〜-3dB(耳に痛い場合)
- OUTPUT VOLUME:ユニティ調整
太さを足す時は上げすぎると濁るので、250/500を少しだけ。高域が強い環境では8kを少し抑えるとまとまりやすいです。
ベースの輪郭を出して、アンサンブルで埋もれにくくする
- 62.5Hz:+1〜+3dB(低域の芯)
- 250Hz:-1〜-3dB(モコつき整理)
- 1kHz:+1〜+2dB(輪郭)
- OUTPUT VOLUME:ユニティ調整
ベースは上げるより“濁る帯域を引く”のが効くことが多いです。まず250を少し下げてから、必要な分だけ足すと破綻しにくいです。
配置は、目的で決めるのが正解です。ボード全体の最終補正なら歪みやプリアンプの後段/アンプのFXループ、歪み方を作るなら歪みの前段、踏んだ瞬間のキャラクターを変えたいなら曲中で踏む位置、という切り分けが運用として強いです。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- 10帯域+入出力で「整える→揃える」が速い
EQで良い感じにしても音量がズレる問題を、INPUT GAIN と OUTPUT VOLUME でその場で回収できます。会場ごとの微調整でもユニティ合わせが短時間で済み、結果として“音作りが終わる”のが実戦的です。 - 歪み前でも後でも役割を持てる、ボード常駐型ユーティリティ
前段なら歪みの芯とタイトさを作り、後段ならアンサンブル内での帯域整理とソロブーストに強い。置き場所を変えるだけで仕事が変わるので、1台あるとボード全体の対応力が上がります。 - 2アウトで2系統運用にも対応できる
2台アンプや別系統出しが必要な現場でも、EQを通した状態で分岐できます。ルーティングの自由度が上がるので、ボード構築の“逃げ道”としても優秀です。
注意しておきたいポイント
- 動かしすぎると、良くも悪くも“別物”になる
±12dBは十分に大きい可変幅です。最初は±1〜3dBの範囲で「問題の帯域だけ」触る方が、バンド内で破綻しにくく、狙いに到達するまでの時間も短くなります。 - INPUT/OUTPUTの設計を曖昧にすると、踏んだ時の印象がブレる
INPUT GAINで次段を押して歪ませるのか、OUTPUT VOLUMEで純粋に音量だけ上げるのかを先に決めると安定します。ここが混ざると「音量が上がったのか、歪みが増えたのか」が曖昧になり、現場で再現しづらくなります。 - 電源は18V前提。ボード電源計画に入れておく
一般的な9V専用ボードと同じノリで組むと、電源まわりで詰みやすいです。18Vが確保できるか、供給電流に余裕があるかを先に確認しておくと、導入後がスムーズです。
機種の仕様
| メーカー | MXR |
| 製品名 | M108S Ten Band EQ |
| エフェクトタイプ | グラフィックEQ(10バンド) |
| バイパス方式 | トゥルーバイパス |
| コントロール | VOLUME:全体の出力レベル(EQ後の最終音量を調整) 31.25Hz:超低域の整理(不要なローの膨らみを抑える/芯を作る) 62.5Hz:低域の土台(太さの基準点。上げすぎると膨らみやすい) 125Hz:ローの胴鳴り感(厚み/迫力に直結。濁る場合は少し引く) 250Hz:こもりやすいロー帯域(モコつきの原因になりやすい) 500Hz:ローミッドの密度(前に出るが、出しすぎると箱っぽくなる) 1kHz:中域の存在感(抜けの基礎。埋もれる時に効く) 2kHz:アタック/輪郭(歯切れが出るが、刺さりにも注意) 4kHz:エッジ/プレゼンス(歪みの輪郭やピッキングの明瞭さ) 8kHz:高域の抜け感(空気感。環境によっては整理が有効) 16kHz:超高域の棚(質感の最後の調整) GAIN:入力ゲイン(次段の押し込み量/ブースト運用の土台) FOOTSWITCH:ON/OFF切替(ON時はスライダーLED点灯) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ライン入力) OUTPUT 1:標準フォーン(出力1) OUTPUT 2:標準フォーン(出力2) DC IN:18V DC アダプター用ジャック |
| 電源 | AC アダプター(付属) |
| 消費電流 | おおよそ 48 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:470 kΩ 出力インピーダンス:5 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:124 mm 前後 奥行:92 mm 前後 高さ:57 mm 前後 質量:約 345 g 前後(電池含む) |