モジュレーション系エフェクターは、ギターの音に“動き”と“奥行き”を足して、フレーズを気持ちよく見せる装置です。とはいえ市場には星の数ほどモデルがあり、試奏できないままデモ音源やレビューを行ったり来たりして、余計に迷う…というのが初心者あるある。結果、最初の1台でつまずく人が多いのも事実です。でも原因は難しくありません。多くの場合、ペダル選びの前に「モジュレーションが担う役割」が整理できていないだけです。
モジュレーション系選びで失敗する人は、機種の問題というより「効かせ方の目的」を勘違いしがちです。
- 「モジュレーション=派手に揺らす」ではなく、実際は “空気感を足す・フレーズを立体的にする・曲の表情を変える” ための道具
- だからこそ、最初の1台は“強い揺れ”より 薄味で気持ちよく効くタイプ を選ぶ方が、結果的に早く理想に近づきます
このあと紹介する10台は、どれも定番ですが、選ぶ基準は「有名かどうか」ではありません。あなたが欲しいのは、次のどれ? ここを先に決めると、読んだ瞬間に答えが出ます。
まず押さえるべき「モジュレーションの5タイプ」
1) コーラス(Chorus)
原音に“揺れた音”を混ぜて、広がりと艶を足すタイプ。
初心者の最初の1台として最も失敗しにくいのがこれです。
- クリーンのアルペジオが一気に立体的になる
- 薄くかけると“上手く聴こえる”
- かけすぎると古い合唱感が出るので注意
2) フェイザー(Phaser)
周波数の山が移動する“うねり”。カッティングや単音リフの存在感が上がります。
- つまみ1個のモデルも多く、運用がラク
- 遅め設定がいちばん使いやすい
3) フランジャー(Flanger)
ジェット感、金属的な揺れ。ハマると強いが、やりすぎると効果音化しやすい。
- サビだけ踏む、リフに一瞬だけ足す、など“踏みどころ”が重要
- 初心者はまず薄味で「揺れの色」だけ足すのが安全
4) トレモロ/ビブラート(Tremolo/Vibrato)
トレモロは曲に馴染ませやすく、ビブラートは“効かせると主役”になりやすい。
- トレモロ:音量が周期的に上下して、ノリ(リズム感)が出る
- ビブラート:音程そのものが揺れて、表情(うねり)が強く出る
5) ロータリー/ユニバイブ(Rotary/Univibe)
キャラが強い分、最初は「遅め・浅め」が鉄則。
- ロータリー:回転スピーカーの立体感。奥行きが一気に増える
- ユニバイブ:独特の粘る揺れ。クラシックロック系の“あの揺れ”
この5分類を知っておくだけで、商品説明の見え方が変わります。「自分は“広がり”が欲しいのか、“うねり”が欲しいのか」が分かるだけで、買い物が一気に楽になります。
初心者が歪みで失敗する原因
初心者が見落としがちなポイントがこれです。モジュレーションって、単体で聴くと“派手で気持ちいい”んですが、曲に混ざると逆に邪魔になることがあります。
- かけすぎる → フレーズがぼやける/酔う/バンドで埋もれる
- 音量・帯域が変わる → ONにした瞬間に違和感(特にコーラス系で起きやすい)
- 歪みと盛りすぎる → 音がモコる/輪郭が消える(揺れも歪みも“情報量”が多い)
つまり「気持ちいいモジュレーション=薄味で、音量と帯域が崩れない」。このあと紹介する10台は、初心者でもこのバランスを作りやすい=失敗しにくい機種を中心に選びます。
まず結論(迷ったらこの3つでOK)
「選ぶのが面倒」「1台目で外したくない」なら、ここから入るのが堅いです。
- 万能で扱いやすいコーラス:BOSS CH-1
薄味の“艶出し”が作りやすく、調整幅も広い。 - フェイザーの教科書:MXR Phase 90
つまみ1個で迷子になりにくい。“うねり”を最短で理解できる。 - 揺れをリズムとして使える:BOSS TR-2
曲で使えるトレモロを作りやすい。音の邪魔をしにくい。
ここから先は「目的別」に選べば、買い物は失敗しない
このあと紹介する10台は、単なる人気順ではなく、
- 常時ONで“上手く聴こえる薄味”が欲しい人向け(主にコーラス)
- リフやカッティングに“うねり”を足したい人向け(フェイザー)
- サビや一部分だけ“キャラ変”したい人向け(フランジャー)
- 揺れを“ノリ”として使いたい人向け(トレモロ/ビブラート)
- 一撃で世界観を変えたい人向け(ロータリー/ユニバイブ)
という“使いどころ”で整理してあります。あなたの目的に一番近いところから読めば、最適な1台が見つかるはずです。
[BOSS] CH-1 Super Chorus(迷ったら最初のコーラスはこれ)
CH-1は“薄味で上手く聴こえるコーラス”を作りやすい定番機。モジュレーション初心者がやりがちな「かけすぎて埋もれる」を、比較的回避しやすいのが強みです。さらにE.LEVELとEQがあるので、音量感や明るさを後から追い込みやすく、スタジオでの微調整もしやすい。まずは「クリーンを立体的にするための薄い艶出し」から始めると、コーラスの良さが最短で分かります。
- 音のキャラ:クリア/広がりが出る/薄味が作りやすい
- 向く環境:クリーン〜クランチ。アルペジオやバッキングの艶出しに強い
- おすすめの使い方
- 常時ON:Depth控えめで“空気感だけ足す”
- サビだけ:広がりを作って展開を出す
- 初期セッティング:Rate 10時 / Depth 10〜11時 / EQ 12時 / E.Level 11時
- 落とし穴:Depthを上げすぎると“揺れが主役”になってフレーズがぼやけます。まずは薄味固定が正解。
[BOSS] CE-2W Chorus(“良いコーラス”の基準になる)
CE-2Wは、アナログコーラスの“まとまりの良さ”と“艶”が出しやすいタイプ。モジュレーション初心者にありがちな「コーラスをかけたら音が細くなった」「不自然にキラついた」を起こしにくく、音像が崩れにくいのが魅力です。2ノブ中心なので追い込みも簡単で、まず「薄くかけて、弾き心地が良くなるポイント」を探すのに向いています。
- 音のキャラ:太め/アナログらしいまとまり/上品な揺れ
- 向く環境:クリーン、クランチ。バッキングやアルペジオの立体感に
- おすすめの使い方
- 薄味常時ON:Rate遅めで“艶だけ足す”
- リードの後ろ:単音を少し太く、前に出す
- 初期セッティング:Rate 9〜10時 / Depth 10時
- 落とし穴:良い音が出るほど盛りたくなりますが、Depthを上げすぎると“合唱感”が出て古く聴こえることも。薄味が一番カッコいいです。
[MXR] Phase 90(フェイザーを理解する最短ルート)
Phase 90は“フェイザーって結局なに?”を一発で理解できる教科書的存在。つまみ1個なので迷子にならず、遅めに設定して歪みの後ろに置くだけで、カッティングやリフに“うねり”と存在感が出ます。モジュレーションは「薄味が正義」ですが、Phase 90は薄味でも効きが分かりやすいのが強い。
- 音のキャラ:柔らかいうねり/動きが出る/主張しすぎない
- 向く環境:クランチ〜歪み。カッティング、単音リフ、バッキング
- おすすめの使い方
- リフの存在感UP:Speed遅めで“後ろにうねりを足す”
- 歪みと合わせる:ソロで“動き”を作る
- 初期セッティング:Speed 9時
- 落とし穴:Speedを上げすぎると“ネタ感”が出やすい。最初は遅めで曲に馴染ませるのが正解です。
[BOSS] BF-3 Flanger(フランジャーの基本を押さえるなら)
BF-3はフランジャーの“ジェット感”から、薄い揺れまで幅広く作れるタイプ。フランジャーはハマると強い反面、初心者が触ると「急に効果音になる」危険もあります。なので最初は“揺れの色を足すだけ”の薄味でスタートするのがコツ。サビだけ踏む、リフの頭だけ踏むなど、踏みどころが決まると一気に武器になります。
- 音のキャラ:金属的/ジェット感/薄味でもキャラが出る
- 向く環境:クリーン〜歪み。リフやサビの“演出”向き
- おすすめの使い方
- サビだけ広げる:Rate遅め+Depth控えめ
- リフに動きを足す:Res控えめで“主張しすぎない”設定
- 初期セッティング:Rate 10時 / Depth 10時 / Resonance控えめ / Modeは基本から
- 落とし穴:Res(レゾナンス)を上げると一気にピーキー。まずは控えめで、物足りなければ少しずつ。
[Electro-Harmonix] Stereo Electric Mistress(幻想的な“揺れの色気”)
Electric Mistress系は、フランジャーにコーラス的な成分が混ざった独特の質感が魅力。いわゆる“ジェット機”というより、クリーンにかけたときの幻想感・奥行きが強く、アルペジオやコードワークが一気に映画っぽくなります。初心者は「派手に揺らす」より、背景に溶け込ませる薄味運用がハマりやすいです。
- 音のキャラ:幻想的/広がる/揺れが上品
- 向く環境:クリーン中心。アルペジオ、アンビエント、空間を作りたい人
- おすすめの使い方
- 背景に置く:Rate遅め+Depth控えめで“空気感だけ”
- サビの景色を変える:曲の展開用に踏む
- 初期セッティング:Rate遅め(9〜10時)/ Depth控えめ(10時前後)
- 落とし穴:かけすぎると主旋律が溶けます。まずは“気づくか気づかないか”くらいが一番カッコいい。
[BOSS] TR-2 Tremolo(“揺れ”をリズムに変える王道)
TR-2は、音量が周期的に上下するトレモロを、WAVE/RATE/DEPTHで素直に作れる王道機。モジュレーションの中でもトレモロは“音の邪魔をしにくい”ので、初心者が「曲で使える」を体感しやすいカテゴリです。設定のコツはRateを曲のテンポに合わせて、Depthを控えめに。これだけで“洒落たノリ”が出ます。
- 音のキャラ:リズムが出る/揺れが自然/曲に馴染ませやすい
- 向く環境:クリーン、クランチ。バラード、サーフ、クリーンバッキング
- おすすめの使い方
- テンポ同期っぽく使う:Rateを曲のノリに合わせる
- アルペジオの質感UP:Depth控えめで“ゆらぎ”を足す
- 初期セッティング:Wave 12時 / Rateは曲に合わせる / Depth 10〜11時
- 落とし穴:Depth深すぎは“音が消える時間”が増えて弾きにくくなる。最初は浅めが正解です。
[BOSS] VB-2W Vibrato(ピッチ揺れ=表現力を増やす“キャラ枠”)
VB-2Wは、コーラスのように原音と混ざる揺れではなく、音程そのものが揺れる“純ビブラート”。効かせると一気に雰囲気が出る一方、やりすぎると不安定に聴こえやすいので、初心者は薄味で“揺れのニュアンス”だけ足すのがコツです。単音リードやスローなフレーズで使うと、効果が綺麗に出ます。
- 音のキャラ:うねる/揺れが前に出る/表情が強い
- 向く環境:クリーン〜クランチ。単音、ローファイ、雰囲気系
- おすすめの使い方
- 単音にニュアンス:Rate遅め+Depth浅め
- “出オチ”にならない薄味:かけっぱなしで背景に置く
- 初期セッティング:Rate 9時 / Depth 9〜10時 / Rise Time長め
- 落とし穴:Depth上げすぎは“音痴っぽく”聞こえやすい。薄味固定が安全です。
[BOSS] RT-2 Rotary Ensemble(ロータリーを現実的にボードへ)
RT-2は、回転スピーカーの立体感をコンパクトで扱えるロータリー系。ロータリーは“空気が回る感じ”が出るので、クリーンのコードやアルペジオに足すだけで一気に雰囲気が変わります。初心者がハマりやすいのは「Fastを多用して派手にする」ですが、基本はSlow中心で薄く。サビだけFastに切り替えると“演出”として強いです。
- 音のキャラ:立体感/回転感/奥行きが増える
- 向く環境:クリーン〜クランチ。コード、アルペジオ、オルガン的フレーズ
- おすすめの使い方
- Slow常時ON:薄くかけて奥行きを作る
- サビだけFast:展開を作る演出用
- 初期セッティング:Slow中心+Depth控えめ
- 落とし穴:歪みと合わせると密度が上がる分、低域が飽和しやすい。ローの整理(歪み量/Depthを下げる)が効きます。
[MXR] Uni-Vibe(ユニバイブの“粘るうねり”を最短で)
ユニバイブはフェイザーともコーラスとも違う“粘るうねり”が魅力で、クラシックロック系のあの揺れを狙えるキャラ枠。効かせると一発で世界観が変わる一方、Depthを上げすぎると効果音化しやすいので、最初は遅め・浅めが鉄則です。歪みと合わせてソロに使うと、揺れが前に出て存在感が出ます。
- 音のキャラ:粘るうねり/トリップ感/キャラ強め
- 向く環境:クランチ〜歪み。ソロ、ブルース〜クラシックロック
- おすすめの使い方
- ソロの存在感UP:歪みの後段で薄くかける
- 常時ON薄味:遅めで“揺れの気配”だけ置く
- 初期セッティング:Speed 9時 / Depth 10時 / Levelは原音と同じ
- 落とし穴:Depthを上げすぎると“効果音”になります。まずは薄味で“雰囲気だけ”が正解です。
[BOSS] MD-200 Modulation(モジュレーションを1台で完結したい人へ)
「コーラスもフェイザーもトレモロも…」と迷うなら、最初から“まとめ役”を選ぶのも合理的です。MD-200は複数モジュレーションをまとめつつ、メモリー保存・呼び出しで実戦運用しやすいタイプ。初心者がやりがちな“全部触って迷子”を避けるコツは、最初から3パッチだけ作ること。薄いコーラス、遅いフェイザー、テンポトレモロの3つがあれば、曲で困りません。
- 音のキャラ:多機能(まずは基準パッチを作ると強い)
- 向く環境:ライブで曲ごとに切替/宅録で多ジャンル対応/省スペース
- おすすめの使い方
- 3パッチ固定運用:薄コーラス/遅フェイザー/テンポトレモロ
- 曲ごとに呼び出し:踏み替えがある現場で強い
- 初期セッティング:まずはDepth控えめ+Rate遅めで“薄味”を作って保存
- 落とし穴:最初から全部触ると迷子確定。最初の1週間は“3パッチ固定”が勝ちです。
最後に:結局どれを選べばいい?
モジュレーションは「これが正解!」というより、あなたが欲しいのが“広がり”なのか“うねり”なのか“演出”なのかで勝ち筋が変わります。なので最後に、この記事を“買う前の最終チェック表”にして締めます。
1台目の選び方(失敗しにくい順)
まずは常時ONで“上手く聴こえる薄味”が欲しい → CH-1 / CE-2W
コーラスは初心者が最も失敗しにくいモジュレーション。薄くかけるだけで、クリーンやアルペジオが立体的になります。最初の1台に向く“寿命が長い”枠です。
カッティングやリフに“うねり”を足して存在感を出したい → Phase 90
つまみ1個で迷子になりにくく、薄味でも効きが分かりやすい。フェイザーの基準機として強いです。
サビや一部分だけ“キャラ変”したい(踏みどころで効かせたい) → BF-3 / Stereo Electric Mistress
フランジャーはハマると一気に景色が変わります。初心者はまず薄味で“色”だけ足すのが成功ルート。派手にするのは慣れてからでOKです。
揺れを“リズム”として使いたい(曲で使える実感が欲しい) → TR-2
トレモロは音の邪魔をしにくいので、導入に向きます。テンポに合わせるだけで一気に“曲っぽく”なります。
一撃で世界観を変えたい(キャラ枠で勝負したい) → RT-2 / Uni-Vibe
ロータリー/ユニバイブは“雰囲気の出方”が別格。ただしキャラが強い分、最初は遅め・浅めで馴染ませるのが鉄則です。
1台でモジュレーションを完結したい(省スペース・曲ごとに切替したい) → MD-200
迷う時間を減らして、必要な効果を全部まとめたい人向け。最初は「薄コーラス/遅フェイザー/テンポトレモロ」の3つだけ作って固定すると失敗しません。
以上、あなたに合った最高のペダルが見つかることを願っております。