ARION SCH-1 Stereo Chorus は、80年代に登場したアナログ・ステレオコーラスで、セッションギタリストのマイケル・ランドウが使用していたことでも有名な一台です。薄いプラスチック筐体と独特のローファイ〜モヤっとした揺れが特徴で、ハイファイ系とは異なる“古いレコーディングのようなコーラス感”を狙いたいときに重宝されます。現在は生産終了で、中古市場ではプレミアが付くことも多いヴィンテージ的存在です。
[ARION] SCH-1 Stereo Chorus|ペダマニレビュー
どんなペダル?
SCH-1 は、ARION の初期アナログ・ステレオコーラスで、同社の定番として知られる SCH-Z の“ルーツ機”にあたるモデルです。BOSS コンパクトとはまったく雰囲気の違う薄型プラスチック筐体に、RATE/DEPTH/TONE の3ノブというシンプルな構成。
最大のトピックは、LAセッション界の重鎮ギタリスト、マイケル・ランドウが使用していたことです。ラック全盛期〜スタジオ黄金期のランドウサウンドの一端を担ったことから、「あのにじむクリーンのコーラスは ARION だった」という文脈で一気に注目度が上がり、その後 SCH-1 は生産終了となったにもかかわらず、中古市場でプレミアが付く人気モデルになりました。
サウンドの方向性としては、現行のハイエンド・コーラスのようにレンジが広くハイがきらびやか、というタイプではなく、あえて中域が少し曇ったローファイ寄りのチューニング。モノラルでも“古いレコーディング感”を出しやすく、ステレオ出力を活かすと、左右で微妙に揺れがズレた心地よい広がりが得られます。
サウンドの特徴(太く曇ったローファイ揺れがクセになるコーラス)
SCH-1 のコーラスは、一言で言えば“太くて少し曇ったローファイ系コーラス”です。ハイファイ系コーラスにありがちなシャリっとした高域の煌びやかさは控えめで、中域に少し丸いコンプレッション感が乗ります。クリーンに薄くかけるだけでも、いきなり80年代〜90年代のスタジオ録りクリーンのような質感が出てくるのが特徴です。
RATE を低め、DEPTH を抑えめにすると、コーラスというより「部屋鳴りと軽いモジュレーションが混ざったような」柔らかい揺れになり、ストロークやアルペジオの奥行きを自然に増やしてくれます。逆に DEPTH を上げていくと、うねりがしっかり見えるコーラス感になりますが、それでもどこか“にじんだ”印象が残るため、BOSS CH-1 や CE-2W のような輪郭の強いコーラスとは明確に方向性が違います。
ステレオアウトを使った場合、左右で揺れの位相がズレることで、音像がふわっと広がりつつ、中央の芯はわずかに残るバランス。クリーン〜クランチに使うと、シューゲイザーやポストロック的な“層になったギターバッキング”を作りやすく、ランドウ的なフュージョン・クリーンを狙うときにも良い意味で“古さ”を足してくれます。
使い勝手・セッティングのイメージ
クリーン用“ランドウ寄り薄がけコーラス”を常時オンにする
ランドウ系クリーンに寄せたい場合は、RATE 9〜10時、DEPTH 9〜11時、TONE 11〜12時あたりから試すのが分かりやすいです。このあたりに設定すると、クリーンがほんのりと揺れながら中域に厚みが乗り、アンプやミックスの中で“単なるクリーン”以上の存在感が出てきます。ストラト系のシングルコイル+フェンダー系アンプとの相性が特に良く、軽いコンプやショートディレイと組み合わせると、まさに80〜90年代セッション系の空気感になります。
クランチ〜リードに足してオルタナ/シューゲイザー寄りの壁サウンドを作る
軽いクランチやディストーションに SCH-1 を足す場合は、RATE 10〜11時、DEPTH 12時前後、TONE 11時付近をスタートポイントにすると、輪郭が少し溶けた“にじむクランチ”を作りやすいです。モダンなハイファイ系コーラスだと歪みとの相性次第でザラつきが気になることがありますが、SCH-1 のローファイ感は、コードの分離をあえて少し曖昧にして“塊で押す”壁サウンドと相性が良い印象です。
ステレオ接続でアンビエント系クリーンのベースとして使う
ステレオ環境が確保できるなら、SCH-1 をディレイ/リバーブの手前に置き、2台のアンプやステレオ入力のインターフェースに接続するセッティングがおすすめです。RATE をゆっくり目(9〜10時)、DEPTH をやや深め(12〜13時)にして、後段にステレオディレイとリバーブを薄く足すと、ピッキングのアタックが前に出過ぎない、ふわっとしたアンビエント系クリーンのベースサウンドになります。ミックスの中で「ギターなのかパッドなのか境目が曖昧な役割」を担わせたいときに非常に有効です。
ペダマニ的「ここが魅力」
- ランドウ使用で語り継がれる“スタジオ系ローファイコーラス”であること
SCH-1 がここまで語られるようになった理由のひとつは、やはりマイケル・ランドウの使用です。ラック全盛期のシステムの中に、あの薄い ARION がこっそり入っていた、というギャップも含めて、“プロが選んだローファイ・コーラス”というストーリーが付いているのは大きな魅力です。単に古いペダルではなく、サウンドと文脈がセットで語られるヴィンテージ機としての立ち位置が、ギタリストの所有欲を強く刺激します。 - 現行ハイファイ系では出しにくい“ちょうどいいくすみ方”が簡単に手に入る
SCH-1 のコーラスは、中域が少し曇ったような、にじんだ質感が特徴です。これは現行のハイファイ志向なコーラスや高解像度マルチでは意図的に避けられがちな方向性で、プラグインやIRだけではなかなか再現しにくい部分でもあります。ギターに“年季の入った録音機材”のような味付けをしたいとき、SCH-1 を一発通すだけでそれっぽい質感が乗るのは、実機ならではの強みと言えます。 - SCH-Z と比べて“より太く濃いローファイ感”を求める人に刺さるキャラクター
後継的立ち位置にある SCH-Z と比べると、SCH-1 はやや太く濃い揺れ方をする個体が多く、ローファイ感も一段強い印象です。SCH-Z の方が扱いやすく実戦向きという評価もありますが、「とことんランドウ寄り」「とことんローファイ寄り」を求めるなら、やはり SCH-1 ならではの個性があります。ペダマニ的には、SCH-Z を“現行ボード向けローファイコーラス”、SCH-1 を“ヴィンテージ文脈込みで楽しむ1台”として棲み分けるのが分かりやすいと感じます。
注意しておきたいポイント
- 生産終了モデルのため“プレミア価格+個体差”との付き合いが前提になる
SCH-1 はすでに生産終了しており、現行品のように新品で簡単に手に入るペダルではありません。中古市場ではマイケル・ランドウ使用の影響もあり、時期によっては明らかにプレミア価格になっていることもあります。また、発売から時間が経っているため、BBD素子やポットの状態などによって個体差も出やすく、「同じ SCH-1 なのにサウンドが違う」という状況も起こり得ます。購入時は出音の確認や、信頼できるショップ/出品者を選ぶことが重要です。 - プラ筐体ゆえに物理的な耐久性は高くないので取り扱いには注意が必要
薄型プラスチック筐体は SCH-1 のアイコンでもありますが、メタル筐体のペダルに比べるとどうしても強度面では不利です。ツアーボードに組み込んでガンガン踏み倒すというよりは、しっかり固定して踏み位置を工夫する、自宅やスタジオ用の“とっておき”として使う、といった運用の方が安心です。ペダルトレインなどにマジックテープで固定し、周囲を他ペダルで囲って直接の衝撃が入りにくいようにする、といった工夫も有効です。 - ノイズやS/Nは最新デジタル/ハイエンド機より不利な場面もある
アナログBBDコーラス+古い設計ということもあり、S/N やノイズフロアに関しては、最新のハイエンド・コーラスやマルチエフェクターに比べると不利な場面があります。ハイゲイン環境で常時オンにすると、多少のヒスノイズやにじみが気になるケースもあるため、クリーン〜軽めのクランチでの使用をメインにする、ノイズサプレッサーと併用するなど、リグ全体でのノイズマネジメントも考えた方がよいペダルです。
機種の仕様
| メーカー | ARION |
| 製品名 | SCH-1 Stereo Chorus |
| エフェクトタイプ | コーラス(アナログ) |
| コントロール | RATE ノブ(揺れのスピード) DEPTH ノブ(揺れの深さ) TONE ノブ(トーンバランス調整) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ベース入力) OUTPUT 1:モノラル/ステレオ L アウト OUTPUT 2:ステレオ R アウト DC IN:9V アダプター用ジャック |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(PSA-100/PSAシリーズ) |
| 消費電流 | おおよそ 12 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:470 kΩ 出力インピーダンス:10 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:73 mm 前後 奥行:127 mm 前後 高さ:50 mm 前後 質量:約 340 g 前後(電池含む) |