高速ポリチューニングと高品位バッファを1台にまとめた定番チューナー
TC Electronic PolyTune 3 は、6弦を一度にチェックできるポリフォニック・チューニングと、高精度ストロボモード、高品位バッファ(BonaFide Buffer)を1台にまとめたペダルチューナーです。ボードの心臓部となるチューナー兼バッファとして、ライブ用のメインボードに採用されることが多い定番モデルです。
[TC Electronic] PolyTune 3|ペダマニレビュー
どんなペダル?
PolyTune 3 は、「1本ずつチューニングする時間を減らしたい」「バッファもまとめて任せたい」というニーズに対して、かなり実務的な解決策を出してくれるチューナーです。
- 弦をジャラーンと鳴らすだけで全弦のチューニング状態を一括表示する ポリフォニックモード
- 1弦ずつシビアに追い込みたいときの クロマチック/ストロボモード
- 信号ロスを抑えるための BonaFide Buffer 搭載
- 内部 DIP スイッチで True Bypass / Buffered Bypass の切り替え可
- 「常時チューナー表示だけど音は出す」「ミュートしてチューニング」など挙動も選択可能
と、ステージ/リハ現場で欲しくなりがちな要素をひとまとめにしてくるタイプのペダルです。
BOSS TU-3 が「ステージ標準のシンプル・チューナー」だとすれば、PolyTune 3 は「高機能寄りでバッファも任せたい派」の軸になる1台、というポジションです。
サウンドの特徴(高精度チューニング+自然なバッファ)
チューナーなので「サウンド」というより「挙動とバッファのキャラクター」がメインになります。
- チューニング精度
ストロボモードでは ±0.02 セント級の高精度とされており、レコーディングやシビアなステージでも十分な精度。クロマチックモードでも実戦上問題ないレベルで、ポリフォニックモードは「素早く大きなズレを見つける」用途に向いています。 - 表示の視認性
高輝度 LED マトリクスにより、暗いライブハウス〜屋外の明るいステージまで視認性は高い部類です。自動輝度調整(環境光に応じた明るさ調整)機能があるモデルなので、目が疲れにくいのも実務的に助かります。 - バッファのキャラクター
BonaFide Buffer は、- 入力インピーダンス:約 1 MΩ クラス
- 出力インピーダンス:約 100 Ω クラス
とされる、高インピーダンス入力/低インピーダンス出力の“教科書的”バッファです。
何メートルかシールドを引き回しても、高域が落ちにくいように設計されており、音色のキャラクターを大きく変えるというより、「レンジと輪郭を整える」役割です。
音質変化を「全くしない」とは言えませんが、一般的には「かなり素直で実務的なバッファ」と評価されるタイプで、ボードの頭に置いて“全体の基準インピーダンス”を整える用途に向いています。
使い勝手・セッティングのイメージ
表から触れるのはほぼフットスイッチとモード切替ボタンだけですが、裏面 DIP スイッチで挙動をかなり細かく変えられます。
基本的な使い方
- 弦をジャラーンと鳴らす
→ ポリフォニック表示で「どの弦がズレているか」を一発把握 - ズレている弦だけを単音で鳴らす
→ クロマチック/ストロボモードで細かく調整
ポリモードは「ざっくりチェックと大きなズレ修正」、単音モードは「最後の追い込み」という役割分担で考えると運用がスムーズです。
バイパスモード/チューナー挙動の代表パターン
内部 DIP 切り替え(機種個体によって名称・位置は変わりますが、ざっくりこんな考え方):
- True Bypass モード
- オフ時は信号を完全バイパス
- 他に信頼できるバッファがある場合や、「原音への介入を最小限にしたい」人向け
- Buffered Bypass モード(BonaFide Buffer)
- オフ時もバッファを通す
- 長いシールド/ペダル数の多いボードで、高域ロスを抑えたい場合に有効
- 常時チューナー表示+ミュート/ノンミュート
- フットスイッチで
- ミュートしてチューニングする
- もしくは、音を出したままチューナーも常時動かす
といった挙動も選択可能(DIP の組み合わせ次第)。
- フットスイッチで
ボード設計としては、
- 「PolyTune 3 をボード一番頭に置いて、バッファ+チューナーを任せる」
- 「他のバッファやプリアンプがあるので、PolyTune 3 は True Bypass で純粋なチューナーとして使う」
この2パターンのどちらかになるケースがほとんどです。
ペダマニ的「ここが魅力」
- ポリフォニックチューニングで“リハ中の時短”に効く
1本ずつチューニングするより、全弦を一度にザッと確認できるのは単純に時短メリットが大きいです。リハの合間や曲間がタイトな現場だと地味に効いてきます。 - 高精度ストロボモードを搭載しつつ、操作はシンプル
精度だけを見ればハイエンドなストロボチューナーと同クラスの領域もカバーしながら、表向きの操作はほぼ1ボタンで完結。難しいことは裏の DIP に追い出してある設計思想は、プレイヤー寄りと言えます。 - BonaFide Buffer 搭載で“チューナー=バッファ”としてボード設計しやすい
別途バッファを用意しなくても、PolyTune 3 をボードの頭に置くだけである程度の信号安定が見込めます。「チューナー+バッファを1台枠で確保したい」人には非常にコスパが良い選択肢です。 - True / Buffered が切り替え可能
「今日はシンプルなボードで True Bypass」「大きなボードでは Buffered に切り替える」といった使い分けもできるため、環境が変わっても買い替えになりにくいのは長期的なメリットです。
注意しておきたいポイント
- DIP スイッチ設定は一度仕様を把握しておく必要あり
バイパスモードや常時オン設定など、重要な挙動は裏面の DIP スイッチで決めます。導入時に一度きちんとマニュアルを読み、メモしておくのがおすすめです。 - ポリフォニックモードは“ざっくりチェック用”と割り切った方が良い
総じて精度は高いですが、「最終的に1本ずつ単音でチューニングを詰める」運用にしておいた方が安心です。特に変則チューニングやドロップチューニングでは、その方が確実です。 - バッファの有無で音の印象が変わる場合がある
よくできたバッファですが、「完全直結のニュアンス」が好きなプレイヤーだと微妙な違いを感じることもあります。True / Buffered を両方試したうえで、自分のボードに合う方を選ぶのが安全です。 - DC OUT の電流総量には注意
PolyTune 3 は DC OUT から他ペダルへも電源供給できますが、元のアダプターの容量を超えるとノイズや動作不良の原因になります。「合計でどれくらい流しているか」は、別途きちんと計算しておいた方が良いです。
機種の仕様
| メーカー | TC Electronic |
| 製品名 | PolyTune 3 |
| エフェクトタイプ | ポリフォニック/クロマチックチューナー+バッファ |
| チューニング性能 | 測定範囲:C0 〜 C8 付近 チューニング精度:±0.5 セントクラス A4 基準周波数:約 432〜445 Hz の範囲で調整可能 |
| 搭載モード | ポリフォニックチューニング(全弦同時表示) クロマチックモード ストロボモード(高精度チューニング) True Bypass / Buffered Bypass(BonaFide Buffer)切替 常時チューナー表示/ミュートチューニングなどの挙動設定(DIP スイッチ) |
| コントロール | FOOTSWITCH:バイパス/チューナー切替(モード設定により挙動が変化) MODE / DISPLAY ボタン:チューニングモード/表示切替 裏面 DIP スイッチ: True / Buffered 切替 Always-on / Mute 挙動 他、細かな動作モード設定 |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ベース入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V DC アダプター用ジャック(センターマイナス、2.1mm) DC OUT:他のコンパクトペダル用電源供給端子 |
| 電源 | AC アダプター |
| 消費電流 | おおよそ 100 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:1 MΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:72 mm 前後 奥行:122 mm 前後 高さ:45 mm 前後 質量:約 300 g 前後 |