荒めの粒立ちが気持ちいいクラシック・ディストーション
MXR M104 Distortion+ は、70年代から続くクラシックな2ノブ・ディストーションです。オペアンプ+ダイオードクリッピングによる荒めの粒立ちと、ファズ寄りに飽和していく高ゲインサウンドが特徴で、ハードロックのリフからパンク系のガレージサウンドまで、ラフにかき鳴らしたくなるキャラクターを持っています。
[MXR] M104 Distortion+|ペダマニレビュー
どんなペダル?
Distortion+ は、黄色い筐体に「OUTPUT」「DISTORTION」の2ノブだけという、非常にシンプルな構成のアナログディストーションです。
内部は古典的なオペアンプ+ダイオードクリッピング回路で、ゲインを上げていくほどコンプレッション感が増し、最終的にはファズライクな飽和感に近づいていきます。
TS系のようにミッドを持ち上げてローをタイトにするタイプではなく、もう少しラフで直線的な歪み方をするのが特徴です。ローエンドはそこまでタイトではありませんが、ギターのレンジにうまく収まるようまとめられていて、「古き良きディストーション」の教科書のようなペダルと言えます。
クランチ寄りのライトディストーションから、ガッツリ歪ませたハードロック・パンクリフまで、シンプルな操作でパッと音を作れるのが Distortion+ の立ち位置です。
サウンドの特徴(ファズ寄りに飽和するクラシックディストーション)
Distortion+ のサウンドは、中域がしっかり出た荒めのディストーション〜ファズ寄り飽和というイメージです。
- ローエンド
ローは極端に削られてはいませんが、現代のメタルディストーションほどタイトではなく、「ややルーズ寄り」な印象。パワーコード主体のリフにちょうどいい量感で、弾き方によってはファズっぽい厚みも出せます。 - 中域
しっかりと前に出る中域があり、バンドミックスの中でギターの存在感を確保しやすいです。TSのようなピークを作るというより、もう少しフラット寄りに「ドン」と出てくるタイプのミッド感です。 - 高域
ゲインを上げるほど、高域のザラっとした歪み成分が増えていきます。TONE ノブは無いので、アンプ側のトーンやギターのトーンで調整する前提ですが、設定次第ではかなり攻撃的な質感にもできます。
DISTORTION を上げていくと、ディストーションとファズの中間のような飽和領域に入り、サステイン長めのリードトーンや、ラフに潰れたコードワークが気持ち良い「古いレコードのロックギター」的なキャラクターになります。
使い勝手・セッティングのイメージ
つまみは OUTPUT と DISTORTION の2つだけです。
EQ が無い分、アンプ側の設定やギターのトーンとセットで考える必要がありますが、そのぶん「決まると早い」タイプでもあります。
ライトディストーション/クランチ寄り
- DISTORTION:9〜11時
- OUTPUT:原音と同じ〜少し上げる
クリーン〜クランチのアンプに対して、薄めの歪みを足す設定です。70s ロックのような「ちょっと荒れたクランチリズム」に向いており、ストラトやテレキャスとの組み合わせで、コードの粒立ちが気持ちいいゾーンです。
ハードロック/パンク系リズム
- DISTORTION:12〜2時
- OUTPUT:バンド内で一歩前に出る程度
パワーコード主体でガッツリ弾き倒したいときの設定です。中域がしっかり出たディストーションで、歪み量としては現代のハイゲインほどではないものの、「クラシックなハードロック〜パンク」の歪み感が作りやすい領域です。
ファズ寄りリード/サステイン重視
- DISTORTION:3時〜フル
- OUTPUT:音量を整える程度
DISTORTION をほぼフル近くまで上げると、コンプレッションが強くかかり、サステインが伸びる代わりに粒が潰れたようなファズ寄りのキャラクターになります。ソロのリードトーンや、壁のようなコードサウンドに向いたセッティングです。
ノイズレベルは、ハイゲイン寄りにするとそれなりに増えてきます。特にシングルコイル+高ゲイン設定では、アンプや周辺機材のノイズも拾いやすくなるため、必要に応じてゲートやボリューム操作でのケアを前提にした方が安心です。
ペダマニ的「ここが魅力!」
- “古典的ディストーション”のど真ん中キャラ
現代の多機能・多バンドEQ付きのディストーションと違い、Distortion+ は非常にシンプルな回路と操作系で「クラシックロックの歪み」をストレートに出してくれます。音の方向性に迷いたくないときの基準としても優秀です。 - 2ノブならではのスピード感ある音作り
OUTPUT と DISTORTION しかないため、ライブハウスやスタジオで短時間に音を決めたい場面でも「ツマミ2つだけ触れば終わる」のが強みです。現場での調整負荷が低いのは、大きな実務メリットです。 - ファズ寄りまで行ける“荒れ具合”
DISTORTION を上げ切ったときの飽和感は、きれいに整ったディストーションでは出せない荒々しさがあります。古めのハードロック、ガレージロック、パンク系をやるプレイヤーには刺さるキャラクターです。 - ペダルボードの歴史を感じられる1台
DS-1 や RAT と並ぶ「歴史的ディストーション」のひとつとして、持っておくと他の歪みペダルとの比較軸が増えます。ペダル好き・エフェクターマニア的にも一本持っておきたい存在です。
注意しておきたいポイント
- トーンコントロールが無い
高域がきつい環境や、ローが出過ぎる環境では、アンプ側のEQやギター側トーンで調整する必要があります。ディストーション単体で音色を完結させたい人には、やや扱いにくさを感じる場面もあります。 - モダンメタル級のハイゲインには向かない
ゲインを上げても、いわゆるモダンハイゲインや djent 系のタイトさ・粒立ちとは方向性が異なります。あくまでクラシックロック〜オールドスクール寄りの歪みと考えた方がスムーズです。 - ノイズやハウリングが出やすい設定もある
DISTORTION を2時以降に上げていくと、アンプのゲインとの相乗効果でハウリングしやすくなります。音量とポジション取り、スタジオの環境次第では、立ち位置やゲインのバランスをシビアに見る必要があります。 - ローがタイトに締まりすぎるわけではない
低音をカチッとタイトにまとめたい用途には、TS系+アンプや、現代的ハイゲインペダルの方が向いています。Distortion+ は、良くも悪くも「少しルーズでロックな低域」です。
機種の仕様
| メーカー | MXR |
| 製品名 | Distortion+ |
| エフェクトタイプ | ディストーション(アナログ) |
| 搭載モード | 単一モード(モード切替なし) オペアンプ+ダイオードクリッピングによるクラシックなディストーション回路 |
| コントロール | OUTPUT:出力レベル DISTORTION:歪み量 |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ライン入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V DC アダプター用ジャック(センターマイナス、2.1mm) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(センターマイナス) |
| 消費電流 | おおよそ 2.5 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 入力インピーダンス:1 MΩ 出力インピーダンス:25 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:60 mm 前後 奥行:111 mm 前後 高さ:32 mm 前後 質量:約 400 g 前後(電池含む) |