5ループと柔軟ルーティングで“踏み替えストレス”を解消するスイッチャー
BOSS ES-5 Effects Switching System は、5系統のエフェクトループに加え、ルーティングの並び替え・バッファ設定・MIDIコントロールまでまとめて管理できるスイッチャーです。コンパクトペダル中心のボードをそのまま活かしつつ、パッチ切り替えで「1曲=1セットアップ」を呼び出せるため、ライブでの踏み替えストレスを大幅に減らすことができます。
[BOSS] ES-5 Effects Switching System|ペダマニレビュー
どんなペダル?
ES-5 は、「コンパクトペダルを中心に組んだボードを、そのまま“システム化”したい人」向けのスイッチャーです。上位機 ES-8 の小型版という位置づけで、ループ数を5系統に絞りつつも、以下のような機能はしっかり継承しています。
- 5つのSEND/RETURNループ
- ループ順の並び替え(パッチごとに順番を変えられる)
- パラレルミックスやミュートルーティングなど、柔軟な信号経路
- 入出力バッファ ON/OFF の選択
- MIDI OUT による外部ペダル/アンプのプログラムチェンジ制御
- CTL/EXP 端子による外部スイッチ・エクスプレッション連携
「歪みを前段にまとめつつ、空間系はアンプのセンドリターンに」「この曲だけはディレイを前に回したい」といった、普通なら配線し直さないとできないことを、パッチ単位で完結させられるのがESシリーズの強みです。
サウンドの特徴(音質を保ったままルーティングだけを自在に変えられる)
ES-5 自体は、基本的に“音を変えない”方向の設計です。ポイントは以下のようなイメージです。
- ループ ON/OFF や順番変更をしても、基本的にはペダルそのもののキャラクターを尊重
- 入出力に選択式バッファを備え、長いケーブルでもハイ落ちしにくいよう配慮
- パラレルルーティングを組んだ場合でも、位相の破綻が出にくいよう設計
その結果として、「この歪みペダルの音は好きだけど、曲ごとにルーティングや組み合わせを変えたい」といった要求に対して、“音質を犠牲にしない範囲で自由度を増やしてくれる箱”という印象です。
ディレイ/リバーブ/モジュレーションなど、常時ONに近いペダル群を ES-5 経由でまとめることで、ノイズと音量バランスの管理もしやすくなります。
使い勝手・セッティングのイメージ
ES-5 は本体上部にループ入出力、フロントにフットスイッチとディスプレイを備えた横長筐体です。操作イメージは以下のような感じです。
基本構成例
- LOOP1:コンプレッサー
- LOOP2:オーバードライブ
- LOOP3:ディストーション
- LOOP4:モジュレーション(コーラス/フェイザーなど)
- LOOP5:ディレイ
アンプの前段とセンドリターンを分けたい場合は、 SEND/RETURN を工夫して「4〜5だけアンプのエフェクトループへ」といった構成も可能です。
プリセット運用イメージ
1パッチ=1曲 or 1セクションとして登録しておくと、ライブ中の操作が圧倒的にラクになります。
例)
- Patch 01:クリーン(LOOP2/3 OFF、1/4/5のみ ON)
- Patch 02:クランチ(LOOP2 ON、他適宜)
- Patch 03:リード(LOOP2+3+ディレイON、ボリュームブースト)
さらに、曲によってルーティング順も変えられます。
- 曲Aでは「コンプ → OD → ディストーション → コーラス → ディレイ」
- 曲Bでは「コンプ → ディストーション → OD(ブースター)→ ディレイ → コーラス」
といった並び替えまでパッチごとに保存できるのは、従来のスイッチャーにはなかったメリットです。
MIDI連携
MIDI OUT から、外部マルチエフェクターやデジタルディレイ、MIDI対応アンプなどにプログラムチェンジを送出可能です。
- ES-5 のパッチ切り替えと同時に、外部ディレイのプリセットも自動切り替え
- ソロ用パッチに切り替えると、アンプ側もハイゲインチャンネルへ自動切り替え
といった“まとめて切り替え”運用ができるようになるため、ハイテク系ボードではほぼ必需品レベルの機能になってきています。
ペダマニ的「ここが魅力」
- コンパクトボード向けの“ちょうどいい”5ループ仕様
ES-8 ほど大掛かりにはしたくないけれど、そこそこ本格的なシステムを組みたいプレイヤーにとって、5ループは絶妙なバランスです。歪み中心+空間系をまとめるには十分な数です。 - ループ順変更・パラレルなど、ルーティングの自由度が高い
単なる「5ループON/OFF」ではなく、シリーズ/パラレル、並び替え、ミュートなど、ルーティングまわりの自由度が非常に高いため、凝った音作りをする人ほど恩恵が大きいです。 - MIDIハブとしても機能する
外部ペダルにMIDI対応ディレイやリバーブを使っている場合、ES-5を中心にパッチ一括制御できるのは非常に強力です。将来的な機材拡張にも耐えられる“伸びしろ”があります。 - ボードの踏み替えを激減させてくれる
「この曲のAメロはこれとこれをONにして…Bメロでこう変えて…」と足元が忙しくなるタイプのセットリストでも、ES-5があれば基本は“パッチ1つ踏むだけ”で完結します。ライブの集中力を演奏そのものに割けるのは大きなメリットです。
注意しておきたいポイント
- ある程度“機材いじりが好きな人”向け
ES-5 の真価はルーティングやMIDI制御を詰めていった先にあるので、シンプルな3ペダル構成程度なら、ここまでの機能は持て余す可能性があります。 - 最初のセットアップに時間はかかる
ループ配線、バッファ設定、パッチ作成、音量バランス調整など、導入初期はどうしても工数がかかります。リハスタや自宅で「一気にまとめてセッティングする日」を作った方が効率的です。 - サイズはコンパクトだが、普通のコンパクトよりは大きい
BOSSコンパクト数台分のフットプリントがあるので、小型ボードだと「ES-5+α」で埋まりがちです。ボードの物理サイズとの相談が必要になります。
機種の仕様
| メーカー | BOSS |
| 製品名 | ES-5 Effects Switching System |
| エフェクトタイプ | 5ループスイッチャー+コントローラー |
| 搭載モード | エフェクトループ:5系統(SEND/RETURN 1〜5) ルーティング:ループ順変更、パラレルルーティング、ミュート/バイパス設定 バッファ:入力/出力バッファのON/OFF選択 制御:MIDI OUT、CTL/EXP 端子(外部スイッチ/エクスプレッション対応) メモリー:パッチメモリー多数(バンク構成で呼び出し) チューナーアウト/ミュート機能(搭載機能として想定) |
| コントロール | ディスプレイ:パッチ名/番号、パラメータ表示用 EDITボタン/カーソルキー/VALUEノブ:各種編集操作 フットスイッチ: パッチ切り替え(1〜5) バンクアップ/ダウン CTLスイッチとしてのアサイン(タップテンポ、ミュート等) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ベース入力) SEND / RETURN:5系統(ループ1〜5) OUTPUT L / R:ステレオ出力(アンプ/ミキサーへ) CTRL / EXP:外部フットスイッチ or エクスプレッションペダル用 MIDI OUT / THRU(他機器の制御用、搭載モデルを想定) DC IN:9V AC アダプター用ジャック(BOSS PSA シリーズ対応) |
| 電源 | AC アダプター(PSA-100/PSAシリーズ) |
| 消費電流 | おおよそ 125 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 規定入力レベル:-20 dBu 入力インピーダンス:1 MΩ 規定出力レベル:-20 dBu 出力インピーダンス:1 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:337 mm 前後 奥行:97 mm 前後 高さ:68 mm 前後 質量:約 1,300 g 前後 |