原音重視のマルチバンド・コンプ
BOSS CP-1X Compressor は、MDPテクノロジーを用いたマルチバンド設計のコンプレッサーです。入力信号を帯域ごとに解析し、必要な部分だけを自然にコントロールすることで、従来のコンプにありがちな「つぶれた感じ」を抑えながら、音量感と弾きやすさを両立。コードから単音フレーズまで、現代的なギターサウンドにフィットする“原音重視のコンプ”として使える1台です。
[BOSS] CP-1X Compressor|ペダマニレビュー
どんなペダル?
CP-1X は、見た目はコンパクトなコンプレッサーですが、中身はかなり“今どき”のマルチバンド・デジタル処理が入ったモデルです。
従来のCSシリーズのような「分かりやすいコンプ感」よりも、ダイナミクスを整えつつ原音の輪郭やピッキングニュアンスを残す方向に振られており、クリーン〜クランチ主体のプレイヤーに向いた設計になっています。
フロントには LEVEL / ATTACK / RATIO / COMP の4ノブを装備。
MDPによる内部処理のおかげで、「設定によって急にノイジーになったり、ローがモコッとつぶれる」といった“コンプあるある”がかなり抑えられており、つまみを回しても破綻しにくいのが実戦的です。
常時オンのトーンメイク用、ブースト用、録音時のレベル安定用など、ギターコンプが担う役割を一通りこなせる万能型コンプと言えます。
サウンドの特徴(原音の輪郭を保ったモダンなコンプレッション)
CP-1X のサウンドは、「原音のキャラクターを壊さずに、音量とダイナミクスだけ整える」という印象が強いです。
- ピッキングの強弱はちゃんと残る
- ロー〜ミッドがつぶれにくく、コードが濁りづらい
- 高域だけが変に強調されて“チリチリ”しにくい
という方向性で、いわゆる「潰してナンボ」のヴィンテージ系コンプとは少し立ち位置が違います。
クリーンに使うと、アルペジオやコードの一音一音が手前に出てきて、録音した時に“ミックスで使いやすい音量感”が最初から作りやすい印象です。
クランチ〜軽めの歪みの前段に入れると、音の輪郭が整い、リズムの粒立ちが揃って聞こえますが、「コンプ効いてます」という圧縮感はそこまで前に出てきません。
ブースト用途でLEVELを上げていくと、ソロ時の押し出しも作りやすく、TS系など他のペダルと合わせても音が破綻しにくい設計になっています。
使い勝手・セッティングのイメージ
ノブ構成は LEVEL / ATTACK / RATIO / COMP。
既存のCS系と比べると少し“スタジオ機寄り”ですが、触ってみると割と感覚的に扱えます。
クリーン常時オン用“うっすらコンプ”
- LEVEL:12時前後(原音と同じくらい)
- COMP:9〜10時(かなり弱め)
- RATIO:9〜11時(軽め)
- ATTACK:12時(標準的な立ち上がり)
クリーン〜クランチで常時オンするなら、このあたりからスタート。
極端な圧縮にはならず、「ちょっと弾きやすくなった」「コードの粒立ちが揃った」くらいの効き方で、歌モノでも使いやすい設定です。
カッティング/ファンク向け“パーカッシブ系”
- LEVEL:12〜1時
- COMP:11〜1時
- RATIO:12〜2時
- ATTACK:1〜2時(やや速め)
ミュート気味のカッティングや、ストラトのフロント/センターでファンクっぽいバッキングをする時のセッティング。
ピッキングのアタックがしっかり前に出る一方で、ピークは抑えられているので、グルーブ重視のフレーズを弾きやすくなります。
クランチ〜リード用“整え系ブースト”
- LEVEL:1〜2時(アンプを軽く押す)
- COMP:10〜11時
- RATIO:11〜1時
- ATTACK:12時前後
歪みペダルやアンプクランチの前に置き、リード時にオンにする想定の設定です。
単音フレーズの音量ムラが整い、アンプの歪み方も安定しやすくなります。あくまで“押し出しと整え”に留め、過度なコンプレッションにしないのがポイントです。
ノイズレベルは、マルチバンド処理のデジタル系としては良好な範囲で、極端なブーストをしなければ実用上大きな問題は出にくい印象です。
ペダマニ的「ここが魅力」
- “コンプ臭さ”が前に出ないモダン設計
いかにもな「パコッ」としたアタック感や、極端なサステインの伸びよりも、音量の整い方や弾きやすさを優先したチューニングになっており、現代のポップス/ロック/ワーシップ系などと相性が良いです。 - マルチバンド処理でコードでも破綻しにくい
一発コードを鳴らしてもローが潰れにくく、テンションコードや分数コードでも情報量が残りやすいです。コードワーク中心のギタリストや、カッティング主体のプレイヤーにとっては大きなメリットです。 - ブースター的な使い方でも破綻しづらい
LEVELを持ち上げても、余分な帯域だけが暴れにくく、歪みペダルやアンプ側の特性を活かしつつ前に出せます。「ブースト+整え」を一台で兼ねたい場合に非常に扱いやすいです。 - BOSSコンパクト筐体でボードに組み込みやすい
サイズや電源は他のBOSSコンパクトと同様で、既存のボードにもそのまま組み込みやすいです。耐久性も含め、ツアーやスタジオ常設ボードに入れておく“業務用コンプ”として安心して使えます。
注意しておきたいポイント
- “バキバキに潰す系コンプ”を求めると物足りないかも
CS-3 的な明確なコンプ感や、カントリー系の「パコパコ感」が欲しい場合は、CP-1X だと上品にまとまりすぎる可能性があります。その場合はヴィンテージ寄りコンプと使い分けるのが良さそうです。 - ノブの意味がやや“スタジオ機寄り”
RATIO や ATTACK など、スタジオコンプ由来のパラメータがあるため、初めてのコンプとしては少しとっつきにくいと感じるかもしれません。ただ、実際には「効き具合(COMP)とキャラ(RATIO/ATTACK)をざっくり回して決める」くらいの運用で十分です。 - マルチバンドゆえに“色気のあるクセ”は薄め
かなり優等生なまとまり方をするので、「エフェクトとしてのコンプのクセ」で音作りしたい人には少し物足りない可能性があります。あくまで“綺麗に整えるコンプ”として捉えた方がしっくりきます。
機種の仕様
| メーカー | BOSS |
| 製品名 | CP-1X Compressor |
| エフェクトタイプ | マルチバンド・コンプレッサー(MDPテクノロジー) |
| コントロール | LEVEL(出力レベル) ATTACK(立ち上がりの速さ) RATIO(圧縮比) COMP(コンプレッション量の総合調整) |
| 接続端子 | INPUT:標準フォーン(ギター/ベース入力) OUTPUT:標準フォーン(アンプ/次段エフェクターへ) DC IN:9V AC アダプター用ジャック(BOSS PSA シリーズ対応) |
| 電源 | 9V 角型電池 AC アダプター(PSA-100/PSAシリーズ) |
| 消費電流 | おおよそ 90 mA(DC 9V 時) |
| 入出力レベル/インピーダンス | 規定入力レベル:-20 dBu 入力インピーダンス:1 MΩ 規定出力レベル:-20 dBu 出力インピーダンス:1 kΩ |
| 外形寸法・重量(目安) | 幅:73 mm 前後 奥行:129 mm 前後 高さ:59 mm 前後 質量:約 450 g 前後(電池含む) |